Pan Africa News 27(1)の記事から

ンカラの森:サバンナ混交林の野生ボノボ調査地の紹介と展望
(by 大西絵奈、ジェイムズ・ブルークス、イノサン・レティ、クロード・モンジエモ、ジャン=クリストフ・ボキカ、新宅勇太、伊谷原一、山本真也) オリジナルの英文記事へ

 ボノボ生息域の西限、サバンナと森林のモザイク環境に生息するンカラの森の野生ボノボについて紹介する。この地域の約40%はサバンナだが、ボノボが実際にサバンナを利用しているのは日中の0.5%に過ぎないことがわかった。しかし、サバンナでの休息、採食、移動も確認されており、彼らがこの環境にどのように適応しているのか、サバンナ・森林双方でのより詳細な行動観察と分析が待たれる。科学的価値の高い調査地ではあるが、ンカラの森のボノボ個体数は近年急激に減少しており、現在10 個体である。ボノボの狩猟は禁止されているものの、周辺の森では罠や薬莢も見つかっていることから密猟の可能性もぬぐい切れず、保全活動が急務である。


変わらぬ食文化? 40 年経ってもマハレのチンパンジーはマクロテルメスを好む
(by アレジャンドラ・パスキュアル−ガリド、ルドルフ・H・シェフラーン) オリジナルの英文記事へ

 タンザニア、ビレンゲ(マハレ)のチンパンジーによるシロアリ釣りが発見されたのは1975年であるが、当時から注目されたのは、ビレンゲに高い密度で生息する3 属のシロアリの中でMacrotermes michaelseni だけが捕食され、他は無視されているという偏った獲物選択性であった。2014 〜 2016 年にかけて36 か所のシロアリ塚を調べたところ、結果は同じであり、40 年間、この偏りに変化がなかったことが再確認できた。防御用の分泌物があり食べるとまずいOdontotermes が捕食されないのはチンパンジー共通であるが、栄養価もありマハレK集団(絶滅)やウガラのチンパンジーが捕食した記録もあるPseudacanthotermes が捕食されないのは不思議である。さまざまな説明を検討しつつ、社会的学習が関与しているかどうかについては、さらなる調査が必要であることを指摘した。




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