Pan Africa News 22(1)の記事から

カリンズ森林保護区におけるチンパンジーの根食について〜薬理的利用の可能性〜
(by 有賀菜津美、松尾ほだか、古市剛史、橋本千絵) オリジナルの英文記事へ

 野生チンパンジーは主に熟したフルーツや地上にあるものを採食するが、根や茎の採食もする。それらの観察は乾燥した環境で観察されており、これまでも注目されてきた。本報告では、薬理的利用をはじめとする根食の役割について解明することを目的とした。2015 年1 月にウガンダ共和国カリンズ森林保護区のM集団にて根食を4 例観察した。チンパンジーではこれまでにも木部の採食について報告されており、根食においても同様にナトリウム摂取の可能性が考えられる。また、1 例についてはNeoboutonia macrocalyx の根と同定した。ウガンダにおいてヒトが腹痛やマラリヤに対して利用していることが報告されており、チンパンジーでも薬理的利用の可能性が考えられる。


出自集団との出会ったときの移出した若メスの社会的なかかわり
(by 戸田和弥、坂巻哲也、徳山奈帆子、古市剛史) オリジナルの英文記事へ

 2014 年に、ボノボの長期調査地であるワンバで、出自集団から移出し隣接集団に移入した若メスが、集団間の出会いというイベントで、母親を含む出自集団の個体と10 か月ぶりに再会する場面が観察された。4 日間続いた出会いの期間中、個体追跡法を用いてその若メスの行動と近接個体を記録した。その結果、母親とのかかわりは疎遠であり、出自集団の一部の若年個体と毛づくろいなどが見られたが、出会いの期間中も多くの時間を新しい集団の中に位置している様子が観察された。若メスと母親および出自集団個体との関係性の変化は、新しい集団への定着と関連しているようである。今後、同様な観察の蓄積から、メスの移籍過程の解明が期待される。




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