Pan Africa News 18(2)の記事から

マハレ(タンザニア):ニシキヘビに対するチンパンジーの反応
(by 座馬耕一郎) オリジナルの英文記事へ

 ニシキヘビはチンパンジーのアカンボウを食べる可能性があると考えられているが、ニシキヘビに遭遇することは極めて稀である。今回その貴重な例を報告する。ニシキヘビを見たチンパンジーは後ずさりしたり、歯をむき出して恐怖の表情を示したりもしたが、アカンボウをつれたメスがオトナオスと共にニシキヘビを追って歩くのも観察された。また「フー」という「何か分からないもの」を見たときに出す声も出していた。ニシキヘビに出会う機会は稀であるため、チンパンジーはそれが何かよく分からなかったと考えられる。


トロ−セムリキ(ウガンダ):なぜチンパンジーはヤシの髄を蛇腹にしがむのか?
(by ウィリアム・C・マックグルー、ケビン・D・ハント) オリジナルの英文記事へ

 トロ−セムリキのチンパンジーはセネガルヤシの葉柄の髄をしがんで汁を摂る。そのしがみかすは他に見られない蛇腹に畳まれた構造をしている。蛇腹に畳むのは固くて長い繊維質の髄を口に入れるための技術と思われるが、今回、折り畳み回数が奇数に大きく偏るという謎めいた法則が明らかとなった。おそらく、最初に口と手で半分に折り畳んだ髄を重ね折りしながら口に入れてしがむため「1+2n=奇数」となるのだろう。このような謎解きが動物の文化研究や行動考古学を面白くするという例を示した。


ブリンディ(ウガンダ):チンパンジーによる対角毛づくろい の予備観察
(by マシュー・R・マックレナン) オリジナルの英文記事へ

 ブリンディのまだ十分人に馴れていないチンパンジー集団を2006年から18ヶ月間調査した結果、25kmしか離れていないブドンゴ森林にはない対角毛づくろい(GHC)が4事例観察できた。いずれも、高順位の壮年雄2頭の間で行われた可能性が高い。先行研究と合わせ、新調査地ではGHCは見つかる場合が多いことが再確認されたが、長期調査地であるゴンベ、ボッソウ、ブドンゴでは見られないという事実が際だつ結果となった。


カメルーンにおける10年間の大型類人猿保全プロジェクトの効果を検証
(by ニッキ・タッグ、チャールズ-アルバート・ピーター、ジャコブ・ウィリー) オリジナルの英文記事へ

 ベルギー王立動物学協会による大型類人猿プロジェクト(PGS)は10年間にわたり、カメルーンのジャー動物保護区に隣接する緩衝地帯において地域密着型保全から大型類人猿の生息調査まで多角的な活動を実施してきた。この地域の大型類人猿の8割以上は保護区の外に生息しており、商業狩猟の影響は危機的である。一方、住民の貧困や教育の問題も合わせて解決する必要があり、PGSは対策を講じてきた。10年間、地域の大型類人猿の密度は大きく変化しておらず、PGSの活動に一定の効果があったことが示唆される。  


バンダファッシ郡(セネガル)のチンパンジー:持続可能な地域密着型保全に向けた調査
(by マヤ・ガスペルジーク、ジル・D・プルーエッツ) オリジナルの英文記事へ

 絶滅が危惧される西チンパンジーの中でもセネガルの地域集団の保護は優先度が高い。2010年4月〜翌6月、バンダファッシ郡の3カ所で実施したチンパンジーの生息分布、ヒトと遭遇した際の反応、森の果実をめぐる人との競合、ヤギ襲撃の問題など、現地住民との複雑な関係などの調査結果を報告する。これらを基礎に、ハビチュエーションを伴わないエコツーリズムや持続可能な地域密着型保全について将来の展望をまとめた。




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