第34回(最終回) さようなら

五百部 裕


 2003 年冬に発刊した「マハレ珍聞」第2号に掲載した「マハレのサルたち」を出発点として、第9 号(2007 年夏)からは「マハレの動物たち」とシリーズ名を変更して継続してきたこの連載も今回で最後となります。シリーズのタイトルには「動物たち」とあるので、哺乳類以外の鳥や魚、あるいは昆虫などを紹介するという手もあるかとは思いますが、それは私の力量を超えるので、哺乳類の紹介を一通り終えた今、ひとまず筆を擱かせていただこうと考えました。
 連載当初は、「A Quarter Century of Research in the Mahale Mountains: An overview」(Nishida, 1990) のTable 1.1をもとに取り上げるサルや動物を決めました。その後、マハレにおけるチンパンジー研究50 周年を記念して出版された「Mahale Chimpanzees: 50 Years of Research」が2015 年9 月に出版されることになり、この連載の担当であった私が「15.Mammalian fauna」とこの章に関連する「Appendix V :Mammal List」を執筆することになりました。そのためにいろいろな情報を集めた結果、Nishida(1990)のTable 1.1 の誤りを見つけたり、新たな知見が得られたりして、この連載にも活かしてきました。そうした中、紹介の仕方にかなりの濃淡があるものの、「Appendix V : Mammal List」に登場しているすべての哺乳類の紹介が終わり今回で連載を終えることにしたというわけです。


写真1 「マハレのサルたち」の「第1回 ア カコロブス 」で使用したアカコロブスの写真



 そもそもこの連載を始めるきっかけになったのは、1995 年にマハレでアカコロブスの調査を行い、またチンパンジーの遊動域内のセンサス調査を行ったことでした。この調査は、アカコロブスをはじめチンパンジーの狩猟対象となっている動物たちの行動や分布、生息密度等を把握することが目的でした。その過程でさまざまなサルや哺乳類を観察したことがこの連載につながっています。そもそもニホンザルやピグミーチンパンジー(ボノボ)の行動や社会を研究してきた私がセンサス調査に関心を持つようになったのは、1992 年にコンゴ共和国で広域調査を行ったのがきっかけでした。それがマハレでのセンサス調査につながっており、最近、調査を行っているウガンダのカリンズ森林でもセンサス調査をしています。そういう意味では、一つの種にこだわって調査するよりも、いろいろな動物を観察することの方が性に合っているのかもしれません。
 これまでの記事で何回か触れたように、私自身が直接観察したことがある動物はむしろ少数で、ほとんどの動物の情報はKingdon 他(2013)の「Mammals of Africa」などに記載された内容の「受け売り」でした。そこで、紹介した動物たちの生態や社会、行動に関する情報をどれだけ生き生きとした形で伝えられたのか、少々(かなり?)不安があります。他方で、自分自身が知らなかった動物たちのことを詳しく知ることができたという楽しさもありました。これでこの連載は終了しますが、何らかの形で読者の皆さんに知的な興奮を与えることができていたら幸いです。これまでありがとうございました。

(いほべ ひろし・椙山女学園大学)


【編集部より】
椙山女学園大学の五百部裕さんが寄稿を続けてこられた「マハレの動物たち」は、今号で最終回を迎えました。五百部さんは、マハレ珍聞2003 年冬号から「マハレのサルたち」の連載を開始され、2007 年夏号からは「マハレの動物たち」とリニューアルしたうえで今号まで寄稿を続けてこられました。一度の休載も挟まず、合計で21 年もの長期連載をして下さったことに、敬意を表するとともに、編集部を代表して心よりの感謝を申し上げます。マハレと言えばチンパンジー、と思われがちななか、五百部さんの楽しい記事のおかげで、私たち読者はチンパンジー以外の「マハレの動物たち」に関心を向けることの大切さに気づかせていただけました。長きにわたるご寄稿、ご協力、本当にありがとうございました。




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