第17回 世界の車窓から―研究者 in タンザニア編―その2清家 多慧
(承前)さて、前号では鉄道旅と言いながら鉄道に乗るところまでたどり着けませんでしたが、今回はようやく鉄道に乗ります。待っている途中、突然真っ暗だった駅舎に明かりがついてテレビが映り、駅舎内がどよめきに包まれました。ずっと暗かったのはどうやら停電だったようです。しかしまた1時間もせずにすぐ停電。そんなこんなで隣の人と話をしたり、横になってうとうとしたりしつつ待つことなんと5時間半。日をまたいで3月12日の午前1時半、ようやく列車が到着したようです。周りの人が動き出します。ポーターの兄ちゃんが大きい荷物を車内に運ぶのを手伝ってくれるというので、スーツケースを頼んだら、そのまま持ち去られてしまいました。どこへ行くの私の荷物…。しかしそのまま乗車が始まって流されるままにホームへ。 写真1 列車が到着し、乗客たちが次々に乗り込んでいく。奥に列車が見える。 列車は思っていたよりも長く、どこに乗ればよいのかもよくわからない!とりあえず1等車に乗りそうなちょっと良い服を着たおじさんについて行ってみます。キョロキョロしていると、さっきのポーターの兄ちゃんがいて、「こっちこっち!」と呼んでくれました。ちゃんと私のスーツケースもあります。よかった〜。1等席は4人一部屋で、男女別。ここでもキョロキョロしていると、おじさんが私の切符を見て部屋の場所を教えてくれました。 写真2 一等室は4人部屋 私と同室だったのは、20代、40代、年配のおばあちゃんの3人。空いていた右手上段のベッドが私の席になりました。車内には扇風機がついていましたが壊れていて動かず、少し暑い…。しかしこの時点で深夜2時過ぎ。とりあえず寝る体制を整えて横になって出発を待ちます。が、待てど暮らせど動く気配がありません。ようやく動き出した時には4時を回っていました。驚異の13時間遅れでの出発です。 食事は部屋に運んでもらえます。車内一食目は朝食にヤギのスープとチャパティ。これがとても美味しい。昼と夜は揚げた鶏肉が食べられます。時折飲み物やお菓子も売りに来ますし、駅ではホームに物売りが来るので、窓から食べ物を買うこともできます。同室の人が買ったふかしキャッサバ芋や飴玉をおすそ分けしてくれたりもして、食料事情はとても快適でした。食べる以外は特にすることもないので、うとうとしたり外を眺めたり、ひたすらぼーっと過ごします。 写真3 朝食のヤギのスープとチャパティ さて、いまさらですが、実は私がTAZARAに乗りたかった理由は鉄道旅への興味だけではありません。TAZARAはセルーという動物保護区の中を通過するので、運が良ければ車窓から動物が見えるかもしれないのです!先輩からその話をきいたときから、私は鉄道からの動物観察をとても楽しみにしていました。なのに、なのに…。なんとセルーの手前で日没、真っ暗な中セルーを通過し、13日の朝、起きた時にはセルーはとっくに通り過ぎていました。何一つ思い通りに行かない鉄道旅。しかも微妙に暑い車内で二晩過ごした朝にはもう体も髪の毛もべとべとで気持ち悪い…。それでも、終点のダルエスサラームが近づき、広大なサバンナの景色から民家の並ぶ街の景色に変わってくると、名残惜しくなるから不思議なものです。 最終的に32時間を車内で過ごし、13日の昼、予定より19時間遅れでダルエスサラームに到着しました。予定より約1日遅れでの到着となったわけですが、予定が1日ずれただけだと考えると、大した遅延ではないように思えるのはタンザニアマジックでしょうか。異国情緒あふれる?タンザニア鉄道旅、機会(と十分な時間!)があれば是非皆さんもチャレンジしてみてはいかがでしょうか。 (せいけ たえ・京都大学) 第41号目次に戻る | 次の記事へ |