≪ニュース!≫ カトゥンビ小学校の竣工

西田利貞


 カトゥンビは、マハレ山塊を擁するマハレ半島の北部にあり、トングェ人最大の集落の一つである。マハレの北半分の水流を集める大きなカベシ川の扇状地に発達したカトゥンビは、マハレ半島の南のカリヤと並んで、コメの有名な産地でもある。カベシの河口近くにはカトベロと呼ばれるカバの出るスワンプがあるが、この起源はカベシの三日月湖だと思われる。この湿地のお陰で、コメやサトウキビが採れるわけだ。

さて、マハレ国立公園ができる前に、住民は公園予定地から外へ出なければならなかった。自分たちの生活の基盤であり、先祖から預かったたいせつな土地を手放さなければならなかったわけであり、お上の命令とはいえ、無念このうえなかっただろう。私たちは、国立公園設立のために犠牲を払った住民に少しでもお返しをしようと、調査に関する使用人は、公園内に住居をもっていたトングェ人を採用する、という原則を守ってきた。川中健二、発子夫妻はワトト基金を設立し、プレスクールをつくり、幼児を教える先生の給料を支給した。また住民の子弟に文房具を配布し、小中学校の学費を援助してきた。

 小学校自体は、もともとカトゥンビから数キロのところにあるのだが、雨期になり大雨が降ると、カベシ川が氾濫して子供たちは通学できなくなるという問題があり、元住民からカベシの左岸、つまりカトゥンビ側に小学校を作ってほしいと度重なる陳情があった。私たちが文科省から支給されている科学研究費補助金は、小学校を作るために使うことはできない。それで、ダレスサラームの日本大使にお願いしたところ、「小規模無償」という1件500万円の資金がマハレ野生動物保護協会を通じてカトゥンビ村に提供されることになった。

 皆様におしらせするのが遅れてしまったが、カトゥンビの小学校は、2年以上かかって、2003年に完成した。ご理解をいただいた佐藤啓太郎大使、この間現地に赴き必要物資を購入したり指示を出したりしてくださった根本利通氏、ホセア・カユンボ氏、上原重男氏、保坂和彦氏等のマハレ協会会員の皆様には心からお礼を申し上げたい。

                    

 (西田利貞)


カトゥンビ小学校 2002年11月 (西江仁徳撮影)


教室の中 2002年11月 (西江仁徳撮影)



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