≪ニュース!≫「大型類人猿の京都宣言」が採択される

西田利貞


 2004年3月3日から5日まで、京都で国際シンポジウム『アフリカ大型類人猿−その進化、多様性および保護』が開かれました。これは、文部科学省の21世紀COE「生物多様性研究の統合のための拠点形成」(A14)の一環をなす国際会議です。オーガナイザーは拠点リーダーの西田利貞、事務局長は山極寿一さん、実行委員長は鈴木滋さんでした。第一日目は、午後1時から、外国人ゲストの宿舎である京都ガーデンパレスでポスター発表と歓迎パーティが開かれました。4日と5日は、京大会館に場所を移し、招待講演者21人による口頭発表がおこなわれました。口頭発表で扱われた6つのテーマは、(1)行動の多様性と人間文化の起源、(2)アフリカ大型類人猿の同所的共存、(3)アフリカ大型類人猿の自然環境と進化、(4)パン属の社会行動の重要性、(5)アフリカ大型類人猿の生物多様性への貢献、(6)世界遺産種としての大型類人猿でした。詳しい内容は、21世紀COEのホームページをご覧ください(http://ethol.zool.kyoto-u.ac.jp/coe/event/2004rei.html)。

 会議の終わりに、GRASP−Japanの設立を西田が報告しました(GRASPについては、次のニュースを参照してください)。また、大型類人猿の京都宣言が採択されました。ジョン・オーツ博士、リチャード・ランガム博士と西田を含む数人が原案を起草しました([Box1]参照)。宣言書には、会場にいた大型類人猿の野外研究者全員を含む74名の参加者が署名しました。署名された人々の名前を[Box2]に記します。

       

(西田利貞)


[Box1] 大型類人猿京都宣言(京都、2004年3月5日)
  1. 京都に集まった国際的な科学者たちは、ヒトの最も近い親類である大型類人猿が、今や絶滅の危機にあり、彼らの数が減少し続けていることを認めた
  2. 大型類人猿(チンパンジー、ボノボ、ゴリラ、オランウータン)を研究している科学者であるわれわれには、この問題を追求すべき特別の義務があると信じる
  3. われわれは、大型類人猿の生息国、非生息国のすべての人々と国々が協力して、大型類人猿と彼らの自然生息地の保護策を改善するよう促したい


[Box2] 署名者一覧 (A,B,C順・敬称略)

足立薫、耀洋子、Karl Amman、Dean P Anderson、青木保、A Kanyunyi Basabose、Juliane Brauer、Takisato Do、Sarah Dunphy-Celli、榎本知郎、藤田志歩、福田史夫、船曳健夫、古市剛史、濱井美弥、花村俊吉、橋本千絵、早石周平、保坂和彦、Michael A Huffman、Kevin D Hunt、伊谷原一、池田由美、稲葉あぐみ、伊藤詞子、岩本光雄、川口直美、北山雄一郎、清野未恵子、沓掛展之、小林聡史、黒田末寿、丸橋珠樹、松原幹、松本晶子、松阪崇久、William C McGrew、John Mitani、森明雄、中村美知夫、中村美穂、中務真人、西田利貞、西江仁徳、西村剛、John F Oates、大橋岳、Andrew J Plumptre、Melissa J Remis、斉藤成也、坂巻哲也、島田将喜、下岡ゆき子、David Sprague, Craig Stanford、菅谷和沙、杉山幸丸、鈴木晃、鈴木哲也、高畑由起夫、竹ノ下祐二、田中ちひろ、田中伊知郎、田代靖子、堤清香、Frans de Waal、和田幹彦、James V Wakibara、Roman Wittig、Richard Wrangham、山極寿一、山本真也、好廣眞一、座馬耕一郎



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