提案:南方のチンパンジーの人づけ(※1)カブンベ・A・カトゥンバ 著者のカブンベ・A・カトゥンバ氏 現在、マハレ山塊国立公園には、人に馴れたチンパンジー集団はMグループ一つしかありません。このMグループが研究の対象ともなり、観光の対象ともなっています。 この国立公園にはかつて二つの人馴れしたチンパンジーの集団がありました。一つはKグループと呼ばれ、もう一つがMグループです。しかし、Kグループの方は消滅してしまいました(※2)。したがって今ではMグループしか残っておらず、このMグループだけが研究と観光の対象として利用されているのです。 そのために生じる問題があります。チンパンジーを見に来る観光客と研究者がMグループに集まりすぎてしまうのです。この混雑は、チンパンジーたちにとっても問題でしょう(※3)。そんなわけで、現在、松谷さんたちが中心となってMグループの北の集団を人づけする試みがおこなわれています。 そこで私の提案ですが、Mグループの南の集団も人づけしてはどうでしょうか。そして、観光客の一部は北の集団を、一部は南の集団を、そして一部はMグループを見るというようにできないでしょうか。そうすれば、一つのグループにたくさんの人が集まりすぎてしまうという問題を軽減することができます。そうすることによって、毎年もっと多くの人がマハレを訪れることができるようになるのではないでしょうか。
(カブンベ・A・カトゥンバ、マハレ山塊チンパンジー調査プロジェクト) 翻訳:中村美知夫 原文はスワヒリ語 訳注 ※1:近くから人間が観察することに馴れさせること。 ※2:マハレでの初期の研究はKグループを中心になされた。オスの数が減少したことで、多くのメスがMグループへ移籍し、1982年にKグループは事実上消滅した。 ※3:多くの人間との接触は、チンパンジーにストレスを与え、病気を感染させる可能性を大きくすると考えられている。 第4号目次に戻る | 次の記事へ |