続・撮影隊の密かな悦び

松谷光絵


 前号に引き続き、テレビの撮影隊としてチンパンジーと接した体験を紹介させて頂きます。「密かな悦び」と題したにも関わらず、前回は待機ばかりでなかなか収録に至らない撮影状況の説明で終わってしまいました。しかし実はその待機中に、思わぬ悦びが訪れるのです。

 たとえば、Mグループの面々がスワンプ(湿地帯)に入り込んだ時、重い荷物を背負ってぬかるみを追跡する訳にも行かず、「どこから出てくるかなぁ」「1、2時間で済むかなぁ。もっと長いかなぁ」などと言いながら、彼らの進路を予想して観察路で待つことになります。その後、夢中で草をむさぼっているのか、まったく声が聞こえてこなかったり、ようやく声がしても遠かったり、「もしかすると予想が外れるのでは」と不安は募るばかり。

 ところがそんな時にひょっこり姿を現すチンパンジーがいるのです。最も多いのが若いオス。仲間たちと距離を置き、単独行動をしていることが多いからです。撮影隊の方は、突然の出現に驚きますが、本人はいたって冷静。どうやら「撮影隊がいるということは、近くにチンパンジーがいるのでは?」と予測して、様子を見に来るようなのです。我々の視線をたどり誰もいないと分かると、フンと小さく鼻を鳴らしたり、その場でセルフグルーミングを始めたり、強いオスがいないのをいいことにディスプレーを行う者もいます。ある日、スワンプの滞在時間が5時間を超え、撮影隊が道端で眠り込んでしまった時など、気がつくと隣でマスディが寝ていました。

 マスディ(写真)はダーウィンと共にカメラに写されるのが大好きらしく、この2頭はカメラを構えていると必ずその前で止まり、どっかり腰を下ろします。最近は3歳から5歳ぐらいの子供たちが自分から近づいてきて、テレビカメラの大きなレンズを覗き込むようになりました。レンズに自分の姿が写るのが不思議で、このもうひとりのチンパンジーの反応を試しているのでしょう。様々なポーズをとり、愛嬌たっぷりの姿を見せてくれます。



(まつや みつえ、TBS「どうぶつ奇想天外!」撮影班)




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