夢のマハレ

丹羽百合子


 2004年9月24日、カタビから、待ちに待ったマハレにチャーター機で向かう。マハレはもうすぐと思うと、嬉しくて胸がいっぱいになる。

 過去二度ほど、故ムゼー小倉がサバンナクラブのツァーで、マハレ行きを計画してくださったことがあった。しかし残念なことに二度とも諸事情で実現できず、いつかは必ずマハレに行きたいとずっと思っていた。そうしてついにその日がやってきた。でも、二泊三日の短い滞在時間に、ほんとうにチンパンジーに会えるの?と半信半疑でもあった。七月に西田先生にお目にかかった折、必ず会えるようにおっしゃっていらしたが、時の運があれば、時の不運もあるわけだし、会えなくてもマハレに来たことだけで満足しよう、と言い聞かせながらこの日を迎えた。

 到着した日の午後と翌日の午前の2回とも、30人以上のチンパンジーに会うことができた。ドキドキ、ワクワクしっぱなしの舞い上がるような感激の二日間で、木洩れ日の中、チンパンジー達と同じ空間にいたひと時は、ほんとうに至福の時だった。

 木の実を食べるもの、枝を振り回すもの、地面をたたいているもの、子を背に乗せ、目の前を通り過ぎるお母さん、子どもは小さな指先で、お母さんの背をぎゅっとつかんでいる。とにかくあきない、一時間なんて驚くほど早い。

 写真は手振れでボケボケに終わったが、目の奥、心の中に残る光景はいつまでも鮮明だ。今でも時折思う。木の中ほどに腰掛け、ずっとひとりでいた子は、どうしているかなと。

 二日目の午後は湖畔を散歩したり、ロフトでタンガニーカ湖の美しい落日を見ながら、ゆっくり過ごした。

 アルーシャに戻る朝、激しい雷雨の音で目がさめたが、ロッジにとても近いところで、彼らの声がする。

 もう一度会いに行きたいが、それは不可能なこと。いつかまた訪れることができたらいいのだが・・・。

 マハレにくることができた嬉しさをかみしめながら、パッキングを始めた。

(にわ ゆりこ、サバンナクラブ)




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