マハレからのたより

ずぶ濡れのチンパンジー調査

ラシディ・S・キトペニ


 私は、マハレでのチンパンジー調査隊で調査助手をしています。1992年にこの仕事を始めてから、現在にいたるまでずっと西田先生たちの調査を手伝ってきました。

 私たちは、乾季も雨季も、ほとんど毎日のようにチンパンジーの調査に出かけます。今回は雨季の調査の様子を紹介したいと思います。
 この時期は、チンパンジーの追跡をするのが大変な時期です。雨が降り出すと、オスのチンパンジーたちは寒さを払いのけるために突撃ディスプレーを始めます。こんなとき、雨の中でチンパンジーを追いかけ、彼らが何をしているのかを観察するのは大変です。私たちは雨よけのために傘を持っていますが、雨の中で傘をさしたまま、チンパンジーを追いかけて観察することは難しいので、結局私たちはずぶ濡れになってしまいます。私たちは、いろんなチンパンジーの様子を知るために、別々の個体を追跡していますが、みんなずぶ濡れになり寒くてたまりません。

 雨がやむとチンパンジーたちは再び歩き出します。森の木々は雨粒でしっとりとしているので、チンパンジーを追いかけると私たちはさらに濡れることになります。こういったわけで、この時期のチンパンジー調査には苦労が多いのです。
 仕事を終えて、いざ家へ帰ろうとすると、雨のために川が溢れているのに出くわすこともあります。これを渡るのがまた一苦労です。さらに、雨季にはシブビ(ゴマフアブの仲間)という刺しバエがたくさんいて私たちを刺して苦しめます。これには、チンパンジーたちもちょっと閉口しているようです。

 装備面も大変です。たとえば、調査用の服は調査の度にびしょびしょになりますし、増水した川を渡るので靴が水浸しになります。雨季にはこういった物品の替えがたくさん必要です。

 さいごに、私たちの雇い主であるチンパンジー調査隊長の西田先生、マハレで調査をしてきた他の日本人研究者たち、そしてマハレで一緒に仕事をしてきた同僚の調査助手たちに感謝したいと思います。


(ラシディ・S・キトペニ、マハレ山塊チンパンジー調査プロジェクト)


写真1:著者のラシディ・キトペニ氏。ちょっと緊張気味のようです。


翻訳:中村美知夫
原文はスワヒリ語。読みやすさを優先するため、かなり意訳しました。



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