第30回 アシナガマウスの仲間

五百部 裕


 今回はアシナガマウスの仲間です。前回のデバネズミ同様、あまり聞き慣れない名前だと思いますが、アシナガマウスはネズミ目(齧歯目、Rodentia)の中のアシナガマウス科(Nesomyidae)に属する動物の総称です。「A Quarter Century of Research in the Mahale Mountains: An overview」(Nishida, 1990)のTable 1.1では、科名がCricetidaeとされ、モリアフリカオニネズミ(Cricetomys emini:英名はGiant rat)とされる1種がマハレに生息することになっていました。しかしその後の研究で、科名は前述のものに修正され、マハレには、サバンナアフリカオニネズミ(Cricetomys gambianus:英名はForest pouched rat)とキノボリマウス(Dendromus sp)の2種が生息していると考えられています。ネズミ目に属する多くの科が、アフリカ以外の地域にも生息する種を含んでいるのに対して、アシナガマウス科はマダガスカルを含むアフリカのみに生息している種で構成されています。この科には六つの亜科が認められており、サバンナアフリカオニネズミはアフリカオニネズミ亜科(Cricetomyinae)、キノボリマウスはキノボリマウス亜科(Dendromurinae)に属しています。



写真 ペットとして飼育されているモリアフリカオニネズミ
(https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Crycetomis_emini.jpg)



 さて、マハレに生息すると考えられるシルバーデバネズミですが、ミオンボウッドランドを中心に、ケニアからタンザニア、コンゴ民主共和国南東部、ザンビア北東部、モザンビーク北部などに分布しています。名前の通り、デバネズミの中では比較的長い銀白色の毛で全身を覆われており、体長は雌雄とも15 cm程度、尾は短く足の長さも2 cm程度しかありません。移動や採食するためのトンネルは地下数cmのところに掘られ、その長さは100 mを超えることもあります。このトンネル内の深さ30〜40 cm程度のところに寝室が作られ、また排泄場所はトンネルの端の方にあるようです。植物食で、根や球根を食べて生活しています。単独生活を送り、昼夜を問わず活動するようです。繁殖には季節性があり、メスは1度に2〜5頭の子どもを産みます。他のデバネズミの仲間に比べ妊娠期間が長く、87〜101日程度とされています。IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストではLeast Concern(低懸念、または低危険種)に分類されており、絶滅する危険性は少ないと判断されています。なお、シルバーデバネズミはカソゲ地区には生息していないと考えられています。
 さすがに地中生活を送る動物ですので、私はまだ観察したことがありませんが、せめて一度くらいは観察してみたいものです。

(いほべ ひろし・椙山女学園大学)



第38号目次に戻る次の記事へ