タンザニア de 遊び!(その5)

島田 将喜


 ボール遊びは、タンザニアではどこでもよく見られる子どもたちに人気のある遊びです。彼らが使う「ボール」は手作りの場合がほとんどで、既製品のボールが用いられることはごくまれです(写真1)。古いビニール袋や布の切れ端をぐるぐると芯に巻き付け、適当な大きさの球形になるまで器用にきつく巻き上げていきます。ボールの出来栄えはそれぞれで、単に周囲を硬く紐などで縛って形を整えただけのものや、大きめの布でくるみ縫い上げたりした凝った作りのものまであります。いずれにせよ、上手に仕上げるには技術や根気が必要で、いい加減なつくりだと遊んでいる間にすぐに壊れてしまいます。



写真1 布でくるんで整形した手作りのボール


 参加する人数が多い場合には地面に線を引いてチームに分かれてドッジボール形式で行われる場合もあるし、数人の子どもたちが互いにぶつけ合うだけで盛り上がっていることもあります。子どもたちが本気でボールをぶつけ合っている様子は、見ている私がハラハラすることさえあります(写真2)。



写真2 相手の子にボールを投げつける女の子


 私自身の観察に基づけば、タンザニアではボールぶつけをして遊ぶのは、男の子より女の子の方が多いようです。同じボールを用いた遊びでも、男の子の方は圧倒的にサッカー遊びをすることが多いのです。日本では(数十年前の記憶ですが)私自身の子どものころには、ボールぶつけはむしろ男の子の方が熱中した遊びでした。気になって帰国後に私の長女にも尋ねてみたのですが、やはり彼女の通う東京の小学校でも、ボールぶつけをして遊ぶのは女の子よりも男の子の方が多いとのことでした。ボール遊びにこうしたジェンダー差や、ジェンダー差自体の地域差(日本とタンザニアでの違い)が見いだされることに、私は注目しています。私たちはボール遊びを通じて、すでにタンザニアの辺境でも浸透している学校という場や、そこでのコミュニケーションを通じて、子どもたち自身が形成し受け継いできた「子ども文化」の一端を介間見ているのかもしれません。

(しまだ まさき 帝京科学大学)



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