会員の皆様へ
―2020年度事業・活動報告―

MWCS-J 代表 保坂 和彦


 2020年度、会費を納入頂いた皆様、ご寄附頂いた皆様に深く感謝いたします。お陰様で計画した事業・活動を滞りなく行なうことができました。
 毎年の事業として、英語でのニュースレター(Pan Africa News)と日本語のニュースレター(マハレ珍聞)をそれぞれ2号ずつ発行致しました。
 コロナ禍のため、日本国内におけるアウトリーチは一度もおこなえずに終わってしまいました。
 今回、通常より大きな出費となっているのは、現地活動援助費です。研究・保全活動の拠点であるカンシアナ基地に研究者が不在となる状況が続いているため、マハレ野生チンパンジー研究プロジェクト(MMCRP)の現地調査助手に大きく依存する状況となっています。Facebook電話やモバイル送金システムなど限られた手段を駆使して、主にポスドク研究者の会員が現地助手との通信及び送金に奮闘してくれました。そのおかげで、感染症予防を徹底しながら、マハレM集団のチンパンジー個体の健康状態や生存の確認をする活動を現地助手に続けてもらうことができました。マハレで活動する上で、最も重要な装備は、タンガニーカ湖の移動に使用するファイバーボート(イコチャ号)とそれに取り付ける船外機です。3月には強風でボートが破損する事故がありました。これらの故障部位を修理するのに必要な費用をMWCS-Jから援助しました。また、調査助手が現地活動を続ける上で必要なマスク、医薬品、傘、腕時計などを日本から輸送するために、MWCS-Jからその購入費用を支援しました。
 また、昨年に引き続き、研究・保全活動を長年支えてくれたトングウェの子弟への特別奨学金事業を現地活動費として支出しました。シャバニ・キトペニ氏が、2019年10月から、キゴマ職業訓練学校(Kigoma Training College)の2年コース(ordinary diploma)に進学するための奨学支援をMWCS-Jが始めたことは前号で報告しました。2年間のカリキュラムを締めくくる裁判所での1か月半の実習を6月下旬~8月中旬にこなし、9月10日に晴れてディプロマを授与される見込みです。本人の中には、弁護士資格を取得したい夢が生まれてきたようですが、どこまで現実的か情報収集を図る必要があります。
 もう一人の奨学生ジャブリ・ブネングワ氏は、2010年10月からムワンザのパシアンシ野生動物学訓練学校の「野生動物管理と法執行の技術者証明書」取得コース(TCWLE、1年間)での勉学を続けてきましたが、彼もまもなく卒業する予定です。興味深いのは、5月20日から6月29日まで組まれているフィールド実践実習サファリというプログラムです。エコツーリズムの現場で働く人たちからさまざまなスキルを教わるそうですが、ンゴロンゴロ、オルドゥバイ渓谷、マニャラ湖、タランギーレ、メセラニ・スネークパークという人気の観光地を回り、最後はキリマンジャロ登山(写真1)で締めくくるという贅沢なものでした。残念ながら、ジャビリ氏は途中で高山病に罹り、意識不明の状態で診療所に搬送される事態に陥ったそうです。3日間入院し、酸素吸入を伴う治療を受けた結果、健康を取り戻したので、ベースキャンプに戻り下山することができたそうです。苦い思い出のはずですが、初めての本格的な登山を経験して多くを学んだとメールに書いてありました。



写真 キリマンジャロ登山中のジャビリ氏。標高2,720 mのキャンプサイト「マンダラ・ハット」にて。



 2021年度も研究者が渡航できない状況が続いており、少なくとも、もうしばらくは、現地調査助手による公園内での研究・保全活動への物資・金銭面での支援がMWCS-Jの活動の中心になります。皆様から頂く会費やご寄附は、貴重な財源となっております。今後の本協会の取り組みにつきましては、随時、ホームページやSNS等を介してお伝え致しますので、皆様の温かいご支援を宜しくお願い申し上げます。
 末筆ながら、会員の皆様からのご要望、住所変更などのご連絡は、お気軽に、協会のメールアドレス(info@mahale.main.jp)までお送り頂けると幸いです。





(ほさか かずひこ・鎌倉女子大学)




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