Pan Africa News 28(1)の記事から

シロアリを掘り起こすチンパンジー―問題含みだが持続する課題
(by ウィリアム・C・マックグルー) オリジナルの英文記事へ

 2021年は、アウストラロピテスクス・ロブストゥスが骨製道具でシロアリ塚を掘っていたとする考古学的論文が発表されてから20年目にあたる。その論文で、著者らは、グドールが報告した野生チンパンジーによる道具を使ったシロアリ採食をモデルとして、初期人類の行動を推定していた。それから20年間の研究動向を見渡す限り、この推定は行き過ぎであったといえるだろう。たとえば、チンパンジーが骨製道具を使った事例は報告されていないし、シロアリ塚を掘り起こす行動も知られていない。彼らが検証実験のために選んだシロアリ種も不適切である。しかしながら、このテーマは多様な分野の研究者の協力も得て、今後も調査するだけ価値はあるだろう。


ワンバのボノボによる捕獲したダイカーに対する被致死性ハンドリング:ボノボのプレイイメージの示唆
(by 横山拓真) オリジナルの英文記事へ

 野生ボノボはウロコリスやダイカー、サルなどの小・中型哺乳類を捕まえて食べることが報告されている。しかしボノボによる狩猟・食肉行動は、捕食対象となる種のバリエーションや、その行動の頻度が研究サイトごとで異なる。コンゴ民主共和国・ルオー学術保護区・ワンバにおけるボノボは、他の地域と比べて狩猟の頻度が低く、ウロコリス以外の哺乳類を食べることは報告されていない。本稿の目的は、ワンバのボノボが捕獲したブルーダイカーに対する反応から、ボノボたちのプレイイメージについて考えることである。本事例から、ボノボにおける狩猟・食肉行動の地域性や社会的習慣の違いについて重要な示唆を得ることができるだろう。


ウガンダ、ブリンディのチンパンジーのオスが人工物を道具に使用してマスタベーション
(by マシュー・R・マクレナン、キム・ヴァンダイク) オリジナルの英文記事へ

 ブリンディのチンパンジー調査集団に属するアラーリというワカモノオスが、地上に落ちていた白い軟質プラスチック瓶を使用してマスタベーションするという珍しい行動を観察し、撮影に成功した。アラーリは勃起したペニスを複数回にわたり瓶の口に挿入し、最初の挿入では25秒間のスラストが観察された。野生下でたまに観察されるオスのマスタベーションはペニスを指でいじるだけでスラストはしない。ただし、射精の有無は確認できておらず、性的興奮を伴っていたかどうかも不明である。一方、瓶を覗き込んだり、プレイ・フェイスを見せたりしたことを考えると、彼にとって、この行為は瓶と交尾する遊びであり、楽しめるものだったようだ。




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