Pan Africa News 27(2)の記事から

コロナ危機に立ち向かい、チンパンジー研究・保全の新時代を創造する
(by 保坂和彦) オリジナルの英文記事へ

 コロナ危機により一斉に現地調査が休止した2020年を振り返り、各調査地の研究者が利害を超えて協力し、次の1年になすべきことを提案した。まず、ポスト・コロナ時代を見越して、どのような状況でも持続可能な研究体制を構築することが課題である。次に、ヒト由来呼吸器感染症から類人猿を守るために研究者が実践してきたことは、コロナ感染対策とよく似ており、私たち自身がこれを呼びかければ説得力が伴う。第三に、新興ウイルスの多くが野生動物由来であることに鑑み、パンデミックが環境問題と深い関連があることを啓蒙する役割も重要である。


COVID-19:ウガンダ、キバレ国立公園セビトリにおけるロックダウン後4か月間の感染リスク軽減策、生態学的・経済的状況
(by サブリナ・クリーフ、クロエ・クトュリエ、ジュリー・ボナルド、ジョン・ポール・オキマット、エドワード・アサル、ジャン=ミシェル・クリーフ) オリジナルの英文記事へ

 新型コロナウイルスの流入を警戒するウガンダは3月下旬、研究を含む国立公園における活動休止を決めた。セビトリでは、現地スタッフを公園内に留め置き、カメラトラップ中心の間接観察から少人数での健康モニタリングなど直接観察へと段階的に調査を再開した。公園を横切る車道のゴミを数えたところ、一時的な減少は見られたが、4か月後にはロックダウン以前より倍増した。また、チンパンジーが轢死する交通事故が1件あり、密猟者が仕掛けた罠による負傷も以前より増加した。人の往来の激減により環境の質が改善するという仮説を支持しない結果である。むしろ周辺地域の経済状況の悪化が野生動物の保全に悪影響を及ぼしている可能性がある。


コンゴ民主共和国、ロマコ‐ヨコカラ動物保護区のボノボ・ツーリズム開発
(by 坂巻哲也、クレオ・マシニ、ジェフ・デュパン) オリジナルの英文記事へ

 絶滅危惧種であるボノボの保全にとって、保護区の持続的な運営が必須であるが、多くの保護区が運営資金などの問題に直面している。コンゴ民主共和国のロマコ森林は、1970年代からのボノボ調査地として知られる。コンゴの戦乱時を経た2006年に保護区として認可され、保護区内に調査基地が維持されてきた。研究とツーリズムを目的とするボノボの人づけが、地域住民と連携しながら行われており、この一年で行動観察が可能なくらいに進展した。交通の便が悪いロマコにおいて、ツーリズム開発からの大きな収入は期待できないが、ボノボ保全の重要地域であることを世界に発信し、保護レベルの向上に寄与することが期待される。




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