マハレ野生動物保護協会(MWCS-J)特別奨学金事業報告

マハレ野生動物保護協会(日本支部)代表 保坂 和彦

 

 現在、マハレ山塊国立公園となっている土地にゆかりのある人々が多く居住する集落カトゥンビ出身のシャバニ・キトペニ氏(写真1)は、2018年9月から1年間、当協会奨学金事業の支援を受けて、キゴマ職業訓練学校の法律学証明書取得コース(1年間)に就学しました。2019年7月の卒業試験に合格し、晴れて修了証書を授与されました。彼は、マハレでの調査に携わった研究者の多くがお世話になったラシディ・キトペニ氏の次男です。卒業後に彼が私に手渡してくれた当協会宛の終了報告書は、装丁まで施され、父親譲りの丁寧なものに仕上がっていました。その報告書によると、第2セメスターには7週間の法律事務所で弁護士の仕事をサポートする実習を体験したことも綴られていました。



写真1 学生会の会長として挨拶するシャバニ・キトペニ氏。



 その後、本人の申し出に応じ、彼の同校の法律学ディプロマ取得コース(2年間)に進学が決まりました。ちょうどマハレ入りしたところだった私は、カシハから理事会に緊急発議メールを送り、承諾を得ることができました。1年目の第2セメスター途中にはパンデミックのあおりで約2か月の休校期間が入ったものの、期末試験までの期間に変更はなく詰め込みが厳しかったようです。現在、第3セメスターの中盤に差しかかりました。2021年8月には無事ディプロマ取得の報告をしてくれることでしょう。卒業後は、カトゥンビに戻り、法律の知識を活かして、実家の両親と地域の人々を支えながら、マハレ周辺の環境保全活動に貢献できることを探したいと語ってくれています。
 もう一人のMWCS特別奨学生、ジャビリ・ブネングワ氏(写真2)はムプグソ教員養成校の幼児教育コース(1 年間)を修了し、2020年7月に無事修了証書を授与されました。その後、将来、野生動物管理が学べる学校に進みたいという書面での申し出があったため、理事会の承諾を得て認めました。彼はすでにウジジ・セカンダリースクールで上級レベル(Form 5 & 6)まで終えており、全国試験(ACSEE)でも上位の学校への進学が狙える成績を修めていました。幸い、ムワンザのパシアンシ野生動物学訓練学校の「野生動物管理と法執行の技術者証明書」取得コース(TCWLE、1年間)への入学が許可され、2020年10月より就学を始めました。密猟者を取り締まるレンジャー養成校としての側面もあるため、必修科目には、法執行訓練(ほぼ軍事教練に近い演習)も含まれます。日本では考えられない教育内容に戸惑いつつも、故ハミシ・ブネングワの遺児である彼がマハレの環境保全を主体的に担える人材として戻ってくることを期待せずにはいられません。



写真2 ジャビリ・ブネングワ氏。パシアンシの動物学実験室にて。



(ほさか かずひこ・鎌倉女子大学)



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