第28回 ヤマネ

五百部 裕


 今回はヤマネです。日本には、ヤマネ科(Gliridae)のニホンヤマネ(Glirulus japonicus)の生息が知られていますが、マハレにも同じヤマネ科に属するヤマネの仲間が生息しています。そもそもヤマネ科はネズミ目(齧歯目、Rodentia)に属し、広い意味でのネズミの仲間です。そしてヤマネ科の仲間は、ユーラシア大陸とアフリカ大陸、およびその周辺の島しょ部に生息しています。ちなみにニホンヤマネは、日本列島のみに生息する日本の固有種です。Kingdon他(2013)の「Mammals of Africa」によると、アフリカに生息するヤマネ科の仲間は2属16種いるとされています。マハレに生息する種は、「Mahale Chimpanzees: 50 Years of Research」の「Mammalian fauna」ではGraphiurus sp.となっており、残念ながら種の特定には至っていません。しかし、Kingdon他(2013)に記載された各種の分布図を参考にすると、サバンナオオヤマネ(英名はNoack’s African Dormouse、Graphiurus microtis)である可能性が高いと思われます。



写真 アフリカヤマネ属の一種(Graphiurus sp.)(Wikispecies より
https://commons.wikimedia.org/wiki/ File:Graphiurus_spec_-murinus-1.jpg)



 アフリカ大陸に生息するヤマネの仲間は、熱帯林から疎開林、川辺林、さらには砂漠のように乾燥した場所など、さまざまな環境下に生息しています。そもそもヤマネ科には九つの属がありますが、Graphiurus属(アフリカヤマネ属)はサハラ以南のアフリカにのみ生息しており、14種が知られています。いずれも小型の哺乳類で、体長は7〜15cm程度、そして体長と同じくらいの長さの長い尾を持っています。地上で活動することもありますが、基本的には樹上性です。雑食性で、果実や種子、昆虫、節足動物を日常的に食べており、時には鳥や爬虫類の卵なども食べるようです。小型で夜行性のため観察が難しく、彼らの詳細な生態や行動は明らかになっていません。マハレに生息すると推定されるサバンナオオヤマネは、ミオンボウッドランドを中心に、スーダンからウガンダ、タンザニア西部、ザンビア、南アフリカなど広い分布域を持っています。この種は、他のヤマネ同様、単独生活を送るようです。繁殖に季節性はないようで、メスは1度に3〜7頭の子どもを出産します。夜行性なので、昼間は樹皮の隙間や木のうろに作った巣で寝ています。そして時には、家やその他の建築物に巣を作ることもあるようです。IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストではLeast Concern(低危険種、または軽度懸念)に分類されており、絶滅する危険性は少ないと判断されています。
 さすがに私もまだ観察したことがありませんが、日本にも近縁種がいると考えると、なんとなく親しみが湧いてきますし、ぜひ一度くらいは、マハレで観察してみたいものです。

(いほべ ひろし・椙山女学園大学)



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