夕暮れのチンパンジー座馬 耕一郎
夕陽が沈むころ、みなさんは何をしていますか。仕事でいつの間にか夜になり夕陽に気づかない人もいると思いますし、買い物などでせわしない人もいると思います。またときには、沈む夕陽を見つめ、移ろいゆく空の色を静かに見つめている人もいると思います。 写真1 夕陽を見つめるゾラ 夕陽を見つめるチンパンジーは、これまでにもいろんな人が観察しています。たとえば1960年にコンゴで調査を行ったコルトラントさんは、1頭のチンパンジーが15分もの間ずっと美しい入り日を見つめ、変化する色を暗くなるまで見ていたエピソードを残しています(文献1)。 また1960年代にタンザニア西部のカサカティ盆地で調査した鈴木晃さんも、チンパンジーが高い木にのぼり、夕陽をいつまでも見つめていた光景を記し、本のタイトルにもしています(文献2)。 写真2 筆者が地上から見た夕景 チンパンジーはいつも夕陽を見るわけではありません。でも、ときどき、夕陽を見つめる姿が観察されます。なぜ夕陽を見つめるのか、その理由は分かりません。そもそも私が夕陽を見つめ、ずっと空の色を見ている理由も、うまく言葉にできません。今日もアフリカのどこかで、チンパンジーが夕陽を見つめているかもしれません。みなさんは、どんなときに夕陽を見て、そして何を思うのでしょう。 (ざんま こういちろう・長野県看護大学) 参考文献 (1) Kortlandt A 1962. Chimpanzees in the wild. Scientific American, 206, 128-140. (2) 鈴木晃 1992. 夕陽を見つめるチンパンジー. 丸善, 東京. 第36号目次に戻る | 次の記事へ |