第16回 珊瑚のようなキノコ―ホウキタケの仲間中村 美知夫
マハレの森の中には、しばしば写真1 のようなキノコが見られます。日本では「ホウキタケ」、英語では「珊瑚キノコ(coral fungi)」と総称される仲間です。 写真1 (おそらく)ホウキタケの仲間 おなじみ『日本のきのこ』で似た形と色のキノコの写真を探してみると、ヒメホウキタケ(Phaeoclavulina flaccida)だとかフサヒメホウキタケ(Artomyces pyxidatus)あたりに似た感じです。アフリカと日本ではキノコ相も異なるはずなので、種レベルでは分からないとしても、せめて属レベルくらいまでは同定したいところです。しかし、この二つ、和名こそ似ているものの、属レベルで異なります。 困ったのでもう少し調べてみます。 狭義には、ホウキタケとはRamaria botrytis という種のことで、写真1 のものよりも先端が赤っぽくなっていて、全体的に枝部分がもっと密集した形状になっています。ホウキタケは食菌で鶏のささみのような歯ごたえなんだとか。残念ながら私は食べたことがないのですが。 この狭義のホウキタケが含まれるRamaria 属が、日本語ではホウキタケ属と言われ、調べてみると、白かったり赤かったり、黄色かったりといったさまざまな種があります(毒のあるものも含まれますのでご用心を)。Wikipedia が正しければ、この属だけで200 種ほどになるとか。 広義のホウキタケの仲間にはさらに様々な分類群のものが含まれるようです。ヒメホウキタケは、ホウキタケ属と同じラッパタケ科(Gomphaceae:ホウキタケ科とされることも)ですが、フサヒメホウキタケのほうはマツカサタケ科(Auriscalpiaceae)という別の科に属しています。科レベルで違うというのに(動物なら、イヌとネコくらい違う!)、図鑑で写真を並べてみても、私にはどう区別したらよいのかまったく分かりませんでした。 写真2 これも私は「ホウキタケの仲間」とメモしていたがどうも違いそうだ… ちなみに、もう一つ何の気なしに「ホウキタケの仲間」とメモしていたマハレのキノコが写真2 です。改めて見比べると、写真1 のキノコとは全く別物ですねぇ。全ての枝が上向きに伸びている写真1 のキノコとは違って、写真2 のほうは放射状に枝が伸びている感じです。ホウキタケと総称される仲間は写真1 のような上向きの枝がほとんどのようですので、写真2 のほうは広義のホウキタケの仲間ですらないのかもしれません。 キノコの素人同定は難しいことを改めて痛感したのでした…。 (なかむら みちお・京都大学) 参考文献 今関六也・大谷吉雄・本郷次雄(編)2011.『 日本のきのこ―増補改訂版』山と渓谷社. Wikipedia online. Ramaria. https://en.wikipedia.org/wiki/Ramaria, accessed onJune17, 2020. 第35号目次に戻る | 次の記事へ |