第15回 イボイボ頭の雪だるま―シロオニタケの仲間?

中村 美知夫





写真1イボイボした頭の幼菌―柄はつるつるしている



 第8回のキヌガサタケのときにも書きましたが、雨季に湿って黒っぽくなった地面には、真っ白なキノコがよく映えます。写真1 のキノコも、まるで小さな雪だるまのようで、美しいですね。
 頭にイボイボがあるのと真っ白な色は、日本で見られるシロオニタケ(Amanita virgineoides)の幼菌とよく似ています。ただ、図鑑などでよく見ると、シロオニタケには柄の根っこの部分にもイボイボがあるようです。この写真のキノコには、下側のイボイボは見当たりませんから、おそらく別種なのでしょう。
 シロオニタケの他にも、頭がイボイボして白っぽいキノコは何種もあります。日本で見られるものでは、タマシロオニタケ(A. sphaerobulbosa)やササクレシロオニタケ(A. eijii)などがそうです。これらはいずれもテングタケ属(Amanita)の毒キノコで、とくにタマシロオニタケは猛毒だと書かれています。世界的に見ると、この属の仲間はさらに多くの類似種があるようで、素人同定ではお手上げです。
 この連載の第1 回で紹介した食用の巨大キノコ、マレリヤもまた同じテングダケ属です。この属にはタマゴタケ(A. caesareoides)のように非常に美味な食菌と、ドクツルタケ(A. virosa)のような非常に危険な毒キノコとが混在しています。同定が不確かなものは決して食べるべきではありません。そもそも、白いキノコは、見た目はきれいでも危険なものも多いのです(ドクツルタケも真っ白なキノコです)。
 さて、写真1のキノコは幼菌ですが、こうしたキノコは成長するともっと柄が伸びて傘も開き、キノコらしい形になります。イボは大きくなると脱落することもあります。そうした白くてもっと大きなキノコも見かけることがありますが、この雪だるまが成長した姿なのか(同種なのか)、私には判断がつきません。



写真2 これもおそらくテングタケの仲間―写真1 のキノコとは柄の質感が異なる



 写真2 のキノコもそうした白いキノコの一つですが、写真1 と同種かというと、微妙です。写真1 のキノコは柄の部分がつるつるした感じなのに対して、写真2 のほうは、モロモロした綿くずのようなものが付着しています。この特徴はむしろコシロオニタケ(A. castanopsidis)に似た感じです。
 マハレにはまだまだ未同定のたくさんのキノコが存在しているのでしょう。もちろん美味しく食べられればそれに越したことはないのですが、よく分からないものは見て楽しむことにしましょう。

(なかむら みちお・京都大学)





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