第12回 至極の逸品―マフンブィ

中村 美知夫


  マハレで採れるキノコの中で、見つけると最も「アガる」のはこのマフンブィ(トングウェ名:mafunbwi、単数形はlifunbwi)ではないでしょうか。
 サイズが大きいこと、一度に数が採れること、そして味。サイズでは第1 回に紹介したマレリアにやや譲りますが、それでも傘が開くと直径30 センチくらいにはなるでしょうか。マレリアがどちらかと言えば水分で膨らんだ感じ(なので炒めるとかなり水が出ます)なのに対して、マフンブィのほうは固く引き締まった感じです。なお、この写真のものはまだ幼菌で、傘が開ききっていません。どんなキノコにも共通ですが、傘が開く前のほうが上物と言えます(市販のマッシュルームやナメコ、エノキなどはすべて傘が開く前の状態で売られています)。
 なぜそんな重要なキノコが今回まで登場しなかったのかと言えば、単純にいい写真がなかったからです。マフンブィは、乾燥したミオンボ林に多く、私たちが普段調査しているカソジェ森林の中で見つかることは稀です(キノコ探しはあくまでも調査のついでです、念のため)。また、時期的にも限られているため、これまで何シーズンかはお目にかからずじまいでした。前回の調査の際にようやく見つけて、写真に収めることができました。



写真1 地面から引き抜いたところ―とにかく尻尾が長い



 第2 回に紹介したブスワレ、第3 回に紹介したムスウェンスウェ、第4 回に紹介したムトゥリと同じシロアリタケ(Termitomyces 属)の仲間ですが、マフンブィ(おそらくTermitomyces letestui)はこれらいずれよりも大型です。ブスワレの際に強調したように、シロアリタケの仲間はその尻尾が歯ごたえがあって美味しいのですが、このマフンブィは御覧のように非常に長い尻尾を持っています。それだけ美味しい部分が多いと言えます。ブスワレの場合、丁寧に掘らないと尻尾がちぎれてしまうのですが、マフンブィの尻尾はより頑丈なのと、だいたい軟らかい粘土質の土に生えているため、頭の部分を持って丁寧に引っ張れば、ズボッと長い尻尾まで抜けます。



写真2 土を落として洗ったところ―切り 落とした尻尾はゴボウのようにも見える



 さて、今回のマフンブィ。大量に採れたので、4 分の3 くらいは調査助手たちにおすそ分け。4分の1 でも結構な量です。やはり、とりあえずはゴマ油とニンニクで炒めて仕上げに醤油。コリコリとした尻尾の食感がたまりません。エリンギも歯ごたえのあるキノコですが、マフンブィには敵いません。全部炒め物にするには多かったので、残りは佃煮風にして頂きました。

(なかむら みちお・京都大学)



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