第23回ジャコウネコ科

五百部 裕


 ジャコウネコ科は、食肉目(ネコ目)に属しています。ジャコウネコという名前にはあまりなじみがないかもしれませんが、日本にも1種が生息しています。それは、もともと中国大陸や台湾などに生息しており外来種と考えられるハクビシン(学名はPaguma larvata)です。そしてマハレには2 種類のジャコウネコ科の動物がいます。



写真 トラップカメラが捉えたジェネット(撮影 仲澤 伸子)



 まずはアフリカンシベット(Civettictis civetta) です。A Quarter Century of Research in the Mahale Mountains: An overview (Nishida, 1990) のTable 1.1 では、学名が「Viverra civetta」となっており東南アジアなどに生息するシベットの仲間と同属とされていましたが、最近の研究からアフリカンシベットは別属と考えられこちらの学名を用います。アフリカに生息しているシベットの仲間はこの1 種のみです。アフリカンシベットは、サハラ砂漠以南のほとんどの地域に生息しています。おとなの体重は10 kg 程度、体長は70 〜 80 cm 程度で中型犬くらいの大きさです。頭から尾にかけての縦縞と腹の横縞が特徴的です。夜行性で、昼間はブッシュの中や他の動物が掘った穴の中などで寝ています。地上性でほとんど木に登ることはないようです。雑食性でネズミやウサギなどの小型の哺乳類や昆虫、さらには落果などの植物性の食物も食べます。単独性で1 頭1 頭がなわばりを構えており、繁殖期以外は他個体と社会交渉をもつことはほとんどありません。1 回に最大4 頭程度の子どもを産みます。子どもの成長はたいへん早く約1 年で性成熟に達します。IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストではLeast concern に分類されており、絶滅の可能性は低いと考えられています。
 もう1 種はジェネット(Genetta sp.)です。上記と同じTable 1.1 では、マハレにはコモンジェネット(Genetta genetta)とオオブチジェネット(G. tigrina)の2 種が生息することになっています。ところがジェネットの分類は現在でも錯綜しており、例えばオオブチジェネットの現在の学名は「G. maculata」が使われることが多く、「G. tigrina」は南アフリカに生息するケープジェネットに用いられています。「Mahale Chimpanzees:50 Years of Research」の「Mammalian fauna」にも書いたように、中村美知夫さんによると、マハレではジェネットの特徴である体の斑点の大きさが異なるジェネットが観察されており、複数種のジェネットがマハレに生息している可能性が高いと考えられますがいまだに同定できていません。今後の研究が待たれるところです。
 ジェネットの仲間はサハラ砂漠以南のほとんどの地域に生息しており、10 数種に分類されています。いずれもおとなの体重は2 kg 程度、体長は50 cm 程度の小型の動物です。どの種も全身、特徴的な斑点で覆われています。いずれの種も雑食性で単独性、そして夜行性のようです。またシベットと異なり木に登るのも得意です。
 今回紹介した2 種ともカソゲ地区にも生息していますが、夜行性ということもあり、残念ながら私は観察したことはありません。

(いほべ ひろし・椙山女学園大学)



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