空飛ぶカタツムリの謎

座馬 耕一郎


まずは写真を見てください(写真1)。「カタツムリが空を飛んでいる?」「合成写真?」「タネや仕掛けがあるんでしょ?」といろいろな感想を持たれたと思いますが、マハレの森の中で、いつものようにシャッターを切って撮影した写真です。そして写っているのは、生きているカタツムリです。


写真1 カタツムリ(2013 年11 月26 日撮影)


 宙に浮かんでいるように見えるトリックは、糸。木の上から糸でつり下がっているのです(写真2)。この糸はどこから出ているのでしょう。どうやらカタツムリが這うときに出すネバネバの粘液のようです。そう、このカタツムリは空を歩いているのです。SF映画風に言えば、Snail Skywalker です。


写真2 細い糸でぶら下がっているのが分かる(2013 年11月26 日撮影)


 このカタツムリのもうひとつの特徴は、つついても体が殻におさまらないことです。体長は1.5センチほどですが、縮んでも殻から体がはみ出してしまいます。もしかしたら殻を大きく丈夫に進化させるよりも、丈夫な糸を作って宙ぶらりんになることで捕食者から回避するように進化した一派なのかもしれません。
 このカタツムリですが、まだ種の同定をしていません。ですので学名が分かりません。もしかしたら新種かも、と思っています。私はこれまでにこのカタツムリを4回ほど見ていますが、私の18年間の調査で4回ほどなので、なかなか観察するのが難しいカタツムリです。ときにはいつのまにか肩にくっついてきたこともあります。またあるときには、頭(?)を上にしてぶら下がっていることもありました(後ろ向きに空を歩いていたのでしょうか・・・)。マハレの調査は50年以上続いていますが、まだまだ知らないことがいっぱいです。

(ざんま こういちろう・長野県看護大学)



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