第21回 ネコ科の仲間

五百部 裕


 2009 年冬に発行された第14 号で取り上げたヒョウと2010 年夏の第15 号で取り上げたライオン以外に、マハレには2 種類のネコ科の動物がいます。今回はこの2 種の紹介です。

 まずは( アフリカン) ワイルドキャット( 学名はFelis silvestris、Mahale Chimpanzees: 50 Years of Research ではFelis sylvestris と表記していたが誤り)です。ワイルドキャットの仲間はヨーロッパやアジアにも生息していますが、いずれも亜種として区別されています。そして現在ペットとして飼育されているイエネコは、アフリカ北部から地中海沿岸地域に生息する亜種であるリビアワイルドキャット(Felis silvestris lybica)を家畜化したものと考えられています。アフリカにはもう一つ別の亜種、ミナミアフリカワイルドキャット(Felis silvestris cafra)が生息しており、マハレにいるのはこちらの亜種です。この2 亜種の分布域を合わせると、サハラ砂漠とコンゴ盆地内の熱帯雨林地域を除いたほぼアフリカ全土になります。大きさは当然、イエネコと同じくらいで、体色は灰褐色です。ネズミやウサギ、小型の有蹄類などを食べていますが、ときに爬虫類やカエル、昆虫なども食べることがあります。雌雄とも単独生活を基本にしていますが、雄のなわばりの方が広く、数頭の雌のなわばりを含んだものになっています。生息環境によってなわばりの大きさは異なりますが、カラハリ砂漠での調査では、雄のなわばりは約10 km²、雌のなわばりは約6 km² でした。1 回に2 から6 頭の赤ん坊を出産し、約1 年で性成熟を迎えます。絶滅の恐れは少ないと考えられており、ときにイエネコと交雑することもあるようです。カソゲ地区に生息することになっていますが、残念ながら私は観察したことがありません。


写真 ウガラのサーバルキャット(撮影 仲澤伸子)



 もう1 種はサーバルキャット( 学名はFelis serval) です。ただし最近では学名をLeptailurus serval とし、ワイルドキャットなどとは別属にする場合もあります。こちらもサハラ砂漠とコンゴ盆地内の熱帯雨林地域を除いたほぼアフリカ全土に分布しています。ネコ科の動物としては中型で、体重は10 kg 程度です。足が長い一方で尾は短く、ほっそりした体型をしています。全身淡黄色で、黒の縞模様ないしはぶち模様があります。小型の哺乳類や鳥、爬虫類、昆虫などを食べていますが、ときに果実なども食べることがあるようです。ワイルドキャットと同じく、雌雄とも単独生活を基本にしており、雄の方が広いなわばりを持っています。1 回に平均2 から3 頭の赤ん坊を出産し、約2 年で性成熟に達し、10 年以上生きると考えられています。分布域が広いこともあり、絶滅の恐れは少ないと考えられています。サーバルキャットも、ワイルドキャットと同じように、カソゲ地区に生息することになっています。

(いほべ ひろし 椙山女学園大学)



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