Pan Africa News 23(2)の記事から

マハレでの金環食―チンパンジーは何か反応を見せたか?
(by 中村美知夫、西江仁徳) オリジナルの英文記事へ

 2016 年9 月1 日に、マハレで金環食が観察された。これまで、マハレでの日食の報告はなかったが、ウェブ上の情報によれば、マハレではこれまでにもけっこうな回数の部分日食が生じていた。ただし、金環食が生じたのは研究史上初めてのことである。午前9:49 から食が始まり、11:32 から11:35 の約2.5 分間、金環食となった。日食の間、気温は5 度ほど周辺の日の平均から下がっていた。チンパンジーの行動に目立った変化は見られず、樹上でアリ釣りを続けていた。金環食の間はかなり暗くなったものの、日食でなくとも、厚い雲に太陽が覆われれば同等に暗くなることはありうる。おそらく、樹上の繁みによって、食による太陽の変化はチンパンジーからは直接見えず、よって特別な反応がなかったものと考えられる。


邪魔しないで!マハレのチンパンジーが泊まり場を変える一要因
(by 座馬耕一郎) オリジナルの英文記事へ

 チンパンジーは樹上に枝葉でベッドを作って眠る。泊まり場には、食物をつける樹の近くや、捕食者の少ない場所、あるいは安定した寝心地のよいベッドを作ることができる樹が好まれるが、いつも最適な場所で眠ることができるとは限らない。2016 年の調査で、ベッドを作ろうと木に登ったチンパンジーが、アカコロブスの攻撃に遭うのを観察した。この事例では、アカコロブスに追われたチンパンジーがその場から逃げ、8 分ほど歩いて離れた場所にベッドを作っていた。マハレに生息するアカコロブスは、チンパンジーに狩猟されることがあるが、反対に、アカコロブスがチンパンジーを攻撃することもある。アカコロブスも、チンパンジーも、互いの存在はそれぞれの睡眠にとって邪魔なのだろう。


人類進化ベッドって何?
(by 人類進化ベッドプロジェクト) オリジナルの英文記事へ

 野生のチンパンジーは毎日ベッドを作る。1 年で365 個作るので、一生で1 万個以上作る計算になる。ベッドは枝葉を折って作られ、楕円の浅いお皿型をしている。人のベッドとは異なる形なのだが、実際に寝てみると、とても寝心地の良いベッドである。私たちの暮らしの中でもあの心地よさを感じたい、ということで、研究者の座馬耕一郎(京都大学)、デザイナーの石川新一(東南西北デザイン研究所)、老舗寝具メーカーの岩田有史(株式会社イワタ)がプロジェクトを開始した。完成した人類進化ベッドのプロトタイプはチンパンジーのベッド以上の寝心地で、2016 年に京都大学総合博物館で開催された「ねむり展―眠れるものの文化誌―」で展示された。現在、市販化に向けて調整中である。
(http://www.iozon.co.jp/jinruishinkabed-project/




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