私のサファリ日誌(第2回)
〜日本滞在から帰国まで〜

ラシディ・S・キトペニ
マハレ野生動物保護協会 カトゥンビ支部
翻訳:保坂和彦(原文はスワヒリ語)


キトペニさんにとって、初めてづくめの日本渡航。無事に東京大学でのマハレ50 周年記念講演会への参加を果たし、鎌倉そして関西方面へと向かいました。その後の滞在でキトペニさんには日本はどんな国に映って、どんな体験をしたのでしょうか。以下、日程の順序等に不正確な箇所がありますが、キトペニさんが書かれたことを尊重してそのまま掲載します。また登場する人名はすべてマハレ関係者です(編集部)


写真1 東大寺大仏殿にて(写真提供 松本卓也)


京都→奈良
 【2015 年9 月22 日】朝、ホテルに迎えに来てくれた松本卓也さんが、ご両親が住む奈良の実家に連れて行ってくれました。ご両親に加え、彼の奥様にも会うことができました。到着するや、松本さんのお母様のオルガン伴奏で皆さんと一緒に、タンザニア国歌“Mungu ibariki Africa (God Bless Africa)” を歌いました。その後、松本家でお昼をご馳走になり、とても楽しかったです。午後、松本さん、奥様、妹さんと奈良見学に出ました。まず、行基像(編注:唐招提寺蔵)を見ました。行基とは、日本で生まれ仏教をよく学んだ人だそうです。大仏殿に移動する途中、モチという食べ物をつくる職人を見ました。公園にはブッシュバックのような動物がたくさんいて、大勢の観光客から餌をもらっていましたので、私たちもビスケットに似たその餌を買って同じことをしました。阿形(あぎょう)と吽形(うんぎょう)の金剛力士像(編注:東大寺南大門)も見ました。大仏殿の中に入ると、とても大きなサナム(像)が安置されていました。このサナムは752 年に仏教振興のため造られ、人々はこのサナムを崇拝してきました。今訪れている大勢の観光客の目的は観光だけであって巡礼ではないそうです。大仏殿には、穴の空いた大きな柱があり、そこをくぐると幸運が訪れるという言い伝えがあるそうです。この日の晩は、松本さんの実家に泊めていただきました。
 【9 月23 日】松本さんと奈良の映画館で、大昔の地球にいたというトカゲの映画を見ました。そのトカゲはとても大きく、人を食べてしまうほどでした。

奈良→京都
 京都水族館を訪れ、いろいろな海の生物を見ました。タンガニーカ湖のオオナマズより大きなイルカは海の獣です。職員の指示を受けて跳び上がり、ぐるりと泳ぎ回ります。そして、職員から餌をもらいます。大きな水を湛えたイルカ・プールには来園客が集まり音楽演奏が始まりました。驚くばかりの迫力でした。水族館で見た生物は以下の通り。ンクリ(編注:河川に棲む小型のコイ科の魚)に似た魚、水生昆虫、水生植物、淡水カメ類、オオサンショウウオ、エイ(コウモリみたいな魚)、チャンバンコモ(編注:キフォティラピア)に似た大型魚、ペンギン、ウミガメ、カブトガニ、オウムガイ、オニオコゼ、ウツボ。
 【9 月24 日】土産物の購入のため、仲澤さん、大谷さんと京都の街に出ました。その後、京都の研究者の皆さんと京都タワーに登り、夜に清風会館に戻りました。
 【9 月25 日】朝、座馬さんが迎えに来てくれ、京都大学野生動物研究センターに移動しました。幸島センター長にご挨拶した後、中村さん、伊藤さん、座馬さん、松本さんと一緒に、故西田利貞先生のお墓参りに出かけました。京都御所の脇を通り、墓所に到着し、実際に西田先生のお墓を見たとき、彼をよく憶えている私は、とても悲しい気持ちになりました。長いこと一緒に仕事をしたというだけでなく、彼は私の能力をとても高く評価して調査助手のチーフに選んでくれたのです。先生の御霊が安らかに眠れるよう神に祈りました。大学に戻ると、皆さんが私のために送別会を催してくれました。タンザニアと日本の料理が並びました。ウガリ&マハラゲ(豆)、マウェッセ(アブラヤシ果肉の粗製油)で揚げた魚などを自分たちで調理しました。送別会の最後に、私はこのサファリを支えて下さった皆さんに感謝を述べました。



写真2 京都大学正門にて(写真提供 松本卓也)


京都→関西空港→ドーハ→ダルエスサラーム
 夕方、大谷さんと京都を発ち、関西空港に移動しました。空港の航空会社カウンターで、一人の女性職員が、私がドーハ行きの飛行機に乗り込むまでサポートしてくれることになりました。大谷さんと別れた後、この女性が本当によくしてくれました。送別会の席で、ドーハ到着後、次のゲートに移動するまでの説明をしっかり受けていたので、あまり戸惑うことはありませんでした。(待合室には)ドーハからダルエスサラームに向かうタンザニア人が大勢いました。
 【9 月26 日】ダルエスサラームに到着すると、空港には根本さんの運転手が待っていて、宿泊先の京大フィールドステーション(FS)まで送り届けてくれました。その後、根本さんがいらしたので、今回私のためにしてくれたすべてのご支援について御礼を述べました。根本さんからは翌朝のキゴマ行きバス・チケットを受け取りました。根本さんやお世話になったFS の方々と別れを惜しみました。

ダルエスサラーム→キゴマ→カトゥンビ
 【9 月29 日】無事、キゴマに到着。夕方には、ボートに乗り、郷里に無事帰還しました。行きも帰りもつつがなく神に感謝です。
 日本を訪れた感想を述べます。まず、日本は暑さもほどほど、むしろ涼しく過ごしやすかったです。そして、日本の人々のおもてなし、遵法精神、信頼関係、時間を大切にする心、勤勉さ、どれも心に残りました。日本人を見倣えば、私たちタンザニア人も、きっとたくさんのことを成し遂げると思います。
 一つ、マハレの調査助手の同僚たちのためにお願いがあります。将来、長きにわたって優れた仕事を務める者がいましたら、私のように日本訪問の機会を与えてやって下さい。
 最後に、今回の旅を最後まで支えて下さった皆さんに御礼を申し上げます。神は私たちの人生を見守っていて下さいます。感謝を込めて。

 (原文:らしでぃ S きとぺに マハレ野生動物保護協会)



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