私のサファリ日誌(第1回)
〜カトゥンビから日本へ〜

ラシディ・S・キトペニ
マハレ野生動物保護協会 カトゥンビ支部
翻訳:保坂和彦(原文はスワヒリ語)




 キトペニ氏は1955 年生まれ。1970 年代後半に始まるマハレのJICA プロジェクトの下で調査助手等を勤めた後、1980 年代初め、パシアンシ野生動物管理訓練学校(モシ)に内地留学。修了証取得後、マハレ野生動物研究センターの政府職員となりました。1991 年、マハレ野生チンパンジー研究プロジェクトの調査助手として復帰し、以後20 年近く研究者の活動を支えて下さいました。退職した今も自宅のあるカトゥンビに生活しながら、臨時で私たちの活動に貢献してくれています。今回、マハレの研究・保全を話し合うシンポジウムやワークショップに参加してもらうため日本に招聘しました。彼にとっては、2014 年に陸路でウガンダ・セムリキ国立公園に行ったのが唯一の海外旅行とのことで、日本どころか喧噪甚だしいダルエスサラームに滞在することも挑戦でした。成田に着くまでは疲労が垣間見えた彼も、日本の関係者の歓待ぶりに喜び、生来の好奇心を発揮しながら過ごしたようです。帰国後、長い日誌のような文章を寄せてくれましたので、2 回に分けて掲載します。誌面の都合により適宜編集したことを予めご了解下さい。(訳者)


写真1 京都市動物園でキリン観察をするキトペニさん( 撮影花村俊吉)




 このたびカトゥンビから日本に渡航し、無事カトゥンビに帰還しましたので報告します。この渡航は多くの日本人研究者と根本利通さん(訳注:JATA ツアーズ社長、MWCS タンザニア事務局長)のご尽力によって実現しました。深く御礼を申し上げます。

カトゥンビ→ダルエスサラーム

 【2015 年9 月5 日】ボートでカトゥンビを出発。【6 日】キゴマ到着。【7 日】バスでキゴマを出発。【8 日】ダルエスサラーム到着。入国管理事務所にパスポート取得のための進捗状況の確認。【10 日】パスポート発給。根本さんの全面的なご協力によりビザ取得を含む旅行に向けたすべての手続きが完了。【11 日】マハレ調査を終えた保坂和彦さんがダルエスサラームに到着。【12 日】保坂さんとミクミ国立公園に1 泊2 日の視察旅行。観察した動物:ヒヒ、イボイノシシ、ゾウ、シマウマ、ワニ、キリン、カバ、インパラ、セグロジャッカル、ラーテル、ジャコウネコ、オオギャラゴ。
ダルエスサラーム→東京

 【9 月15 日】ダルエスサラーム空港を出発。ドーハ経由で日本へ。【16 日】成田空港に到着。保坂さんと別れて独りで列車移動。(訳注:成田エクスプレスで)立川に到着したとき、島田将喜さんが車内に乗り込んできて目的駅の八王子駅まで同行。【17 日】翌朝、島田さんが迎えに来てくれて彼の自宅に招待されました。奥様やお子さんたちがもてなしてくれました。その日はよく食べよく寝ることができ、とても嬉しかった。【18日】午前中、島田さんと街を散歩。午後、仲澤伸子さんが衣料品店で明日の式典に着る服を一式買うのを手伝ってくれ大変有り難かった。【19 日】大谷ミアさんと東京大学に移動し、マハレ50 周年記念イベントに出席。ここで懐かしい方々と再会することができました。開会挨拶の際、亡くなられた今西、伊谷、西田、川中、掛谷、上原の各先生方の写真が掲げられた後、私が3 分間の祝辞を述べました。とても良かったという感想を聞くことができて、とても嬉しかった。シンポジウムの後は懇親会に参加。

東京→大船→京都



写真2 大船の海鮮料理店で昼食(撮影  保坂和彦)


 【9 月20 日】大谷さんと大船の鎌倉女子大学に移動。トヨタ財団研究助成プログラムのワークショップに参加。会が終わると、中村美知夫さん、伊藤詞子さん、座馬耕一郎さんとともに京都へ移動。17 時頃、とても速く走る列車に乗りましたが、これが世界的に有名な新幹線。座席から日本一の山、富士を見ることができました。【21 日】午前中、花村俊吉さんと嵐山モンキーパークいわたやまに行きました。園内にはサルが泳ぐ池があり、コイと呼ばれる魚がいました。タンガニイカのムバラガ(訳注:コイ科)に似ていますが、赤や黄色の模様がある点が違います。またこの公園には階段を登っては滑り降りる遊具がありました。降りるまではせいぜい3 秒ですが、大勢の子どもたちが遊んでいました。この公園にはニホンザルの他、イノシシやシカがいるそうです。午後、京都市動物園に移動。ここで見た動物:キリン、カバ、大きなヤギ、大きなヒツジ、イノシシの仲間、アフリカにはいないペンギンという鳥(本人注:飛ばないかわりに泳ぐのが好きだそうです)、南米の鳥、チンパンジー、テナガザル、アジアのサル類、ゾウ、クジャク、エミュー、ハイラックス、ゴリラ、ヘビ、サンショウウオ、トラ、ライオン。花村さんは夕方自宅に招いてくれ、奥様や子どもたちに会えて嬉しかった。その晩は花村家で食事をご馳走になりました。(つづく)

 (原文:らしでぃ S きとぺに マハレ野生動物保護協会)



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