Pan Africa News 22(2)の記事から

ワンバの野生ボノボで見られた、年寄りメスによる母親の意に反したアカンボウ運搬
(by 徳山奈帆子) オリジナルの英文記事へ

 母親に長時間子どもを返さない子守り行動は「誘拐行動」と呼ばれ、多くの霊長類で観察される。母乳に頼る幼い赤ん坊が誘拐されると、餓死してしまうこともある。コンゴ民主共和国ワンバで、非常に年寄りのメスボノボが7か月齢の赤ん坊を運搬する行動を観察した。若い母親が赤ん坊を樹冠から落としてしまった際、年寄りメスの「ボクタ」が母親より先に駆け寄ってその子を拾い上げた。ボクタは、のぞき込みや性器こすりを行って返還を求める母親を無視して赤ん坊を運搬した。51分後、赤ん坊が大きな悲鳴を上げた瞬間に母親は赤ん坊を素早く掴んでボクタから引き離し、樹上へ駆け上った。ボクタはそれ以降、その赤ん坊に特別な興味を示さなかった。


ウガラ(西タンザニア)、イッサ谷のサバンナ・チンパンジーがブルーダイカーを肉食分配
(by セバスチャン・ラミレス=アマヤ, エドワード・マックレスター, フィオナ・A・ストゥワート & ア レックス・K・ピール) オリジナルの英文記事へ

 サバンナのチンパンジーによる肉食は西アフリカの調査地では、森林のチンパンジーとは異なり、地上性の動物相から獲物種を選択する傾向が見られるが、ウガラでは直接観察はもちろん糞分析を用いても、肉食の証拠が得られること自体が非常に稀である。今回、ウガラのイッサ谷で、オトナ雄のチンパンジーが樹上でブルーダイカーの肉を食べている場面に遭遇した。すでに肉食が進んだ状態であったが、別のオトナ雄やオトナ雌が肉分配を受けたこと、雌の子にも肉が渡ったことが確認できた。


人工物を対象とした探索行動後に新たに発明された野生チンパンジーの遊びのパタン
(by 島田将喜) オリジナルの英文記事へ

 若いメスのQLが、観察者が紛失したデジタルハンディカムを保持した。数分間にわたり、カメラを噛む、なめる、弄り回す行動を繰り返し、さらに鼠蹊部ポケットに挟んで前進、前方に放るなどの行動が観察された。ハンドグリップ部分のベルトを緩めた結果、一本のベルトの端に本体がくっついた形状(=ひも+塊)になった。QLは両手で木にぶら下がり、口でベルトを噛みながら両足の足裏で本体へのキックを繰り返した。自然界で「ひも+塊」の形状をもつ物体はほとんど見つからないが、数分間集中的にカメラに対する探索を行ったのちに、ひもと塊それぞれを対象とした既知の遊びのパタンを組み合わせ、新たな遊びのパタンを発明したと考えられる。




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