おめでとうマハレ!50周年!

マハレのチンパンジー研究
50周年について

マハレ野生動物保護協会 日本支部代表 保坂 和彦


 初夏の候、会員の皆様におかれましてはますますご健勝のことと存じます。

 さて、マハレ山塊におけるチンパンジーの研究・保全の活動は、今年が50 周年の節目の年を迎えます。長きにわたる皆様のご支援に深く感謝の意を申し上げます。

 世界で二番目となるチンパンジー長期研究プロジェクトの嚆矢は1965 年に放たれました。この年、第四次アフリカ類人猿学術調査隊(伊谷純一郎隊長)が組織され、8 〜 9 月には伊沢紘生隊員のカソジェ予備調査、9 月には分岐点となった隊員会議、10 月初めには西田利貞隊員のカソジェ入り、と目まぐるしい展開があり、翌年7 月の餌づけ成功に結実しました(その頃に撮られた写真の一部がパン・アフリカ・ニューズ今月号に掲載されています)。それからマハレのチンパンジー研究は、西田先生、川中健二先生、上原重男先生をはじめとする多くの研究者が継続し、世界有数の野生動物長期研究に成長しました。2011年には、西田先生のちょうど一世代(= 30 年)下にあたる中村美知夫を柱とする研究体制にシフトし、今に至ります。



マハレ50周年宣伝用ポスター


 マハレにとってもう一つの大きな分岐点が1985 年のマハレ山塊国立公園の誕生でした。これは日本によるタンザニアの環境政策支援の成果であると同時に、マハレの住民トングウェの社会と暮らしを一変させました。1994 年に設立したマハレ野生動物保護協会が公園内の保全活動のみならず地域社会の教育や医療を支援してきた理由は、マハレの環境保全にはマハレの自然と融合した文化をもつ民族の主体的関与が欠かせない、と考えるためです。

 1990 年代半ばより研究の対象や関心の多様化が進み、チンパンジーに加え、昼行性哺乳類、近年ではヒョウや夜行性哺乳類の調査も始まりました。また、1994 年には加納隆至先生が1960 年代に広域調査をしたウガラでの活動を再開し、今は伊谷原一、小川秀司をはじめとする研究者が継続しています。マハレとウガラは大マハレとよばれ、西部タンザニアにおける野生動物保全研究の拠点となっています。

 50 周年を記念して、7 月には日本霊長類学会大会の自由集会、9 月には英文学術図書(パン・アフリカ・ニューズ今月号に出版予告が掲載されています)、和文単行本(中村単著)の発行、10 月には日本人類学会大会の進化人類学分科会、11 月にはキゴマでの祝典イベントが予定されています。これらの概要は次号でご報告致します。



マハレ50 周年宣伝用チラシ( 裏面)


 そして9 月19 日、マハレ50 周年記念展・公開シンポジウム「野生チンパンジー学の50 年」を東京大学弥生講堂にて挙行致します。このイベントは、長年の研究活動を間接的に支えてきた納税者、寄付を続けて下さった当協会支援者の方々に向けたアウトリーチ活動にしたいというマハレ山塊チンパンジー研究プロジェクト執行部の意向を受け、主催者である実行委員会が組織され、日本の首都である東京で開催する運びになりました。共催団体である京都大学野生動物研究センター、公益財団法人東京動物園協会、マハレ野生動物保護協会、科研費基盤研究(A)「遺伝・形態学的手法を利用したアフリカ産オナガザル科霊長類の採食戦略の解明」(五百部裕)の支援を背景に順調に準備を進めております。

 詳細につきましては、ポスター・チラシ及び公式ホームページ(http://mahale.main.jp/50th/)をご参照下さい。ご多用の毎日とは存じますが、皆様のご参会をお待ち申し上げます。

 会場ロビーに展示する教育普及目的の解説パネルの大部分は、後日、当協会ホームページ上の常設展示として掲載する予定です。当日ご参加がかなわない方におかれましては、是非こちらをご覧くださいますようお願い申し上げます。

(ほさか かずひこ 鎌倉女子大学)



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