タンザニア de 遊び!(その2)島田 将喜 私は近年、タンガニーカ湖畔から内陸に一日歩き つめた距離にあるトングウェの人びとの小集落を繰 り返し訪問しています。その集落での滞在中、子ど もたちが夢中になっていた遊びが、これまで見たこ とがなく、とても印象的でしたので紹介します。そ れは「畑の犂( すき) 入れごっこ」です(写真)。 ![]() 左の子が(牛に引かせた) 「犂」を操り、右の子が牛に「鞭」を入れる。 この遊びは、二股に分かれた大枝を「犂」に見立 てて、犂を畑に入れる役(写真左)と、大木の表皮 を削り出して作られたひもを「鞭( むち)」に見立 てて、牛に鞭を入れる役(写真右)の二つの役割の 連携によるごっこ遊びです。本当の犂入れ作業では、 犂は牛が引いているはずなので、そこに牛がいると 見立てて前進してゆくわけですが、鞭入れ役の子の、 犂の前方に鞭を入れる表情や怒鳴り声はなかなか真 剣そのものです。 面白いことに、ブガラバの子どもたちの犂入れ ごっこは、自分の親たちの農法の模倣ではなさ そうなのです。というのも牛を所有しないトングウェたちは 畑を耕す際、人力のみで鋤入れを行うからです。 牛に犂を引かせて畑を耕すのは、数年前からこの地域に牛 の群れを連れて移入してきた牧畜民スクマの人びとなのです。 つまり犂入れごっこは、最近になってこの地 域で共存し始めた隣人たちの生業活動を、地元の子ども たちが珍しがり、巧みに模した遊びなのです。 このような子どもたちの目を通して見た大人の 社会の縮図・時代の鏡となっている遊びには、大人の私た ちもハッとさせられることがあります。 (しまだ まさき 帝京科学大学) 第24号目次に戻る | 次の記事へ |