Pan Africa News 21(1)の記事から

チンパンジー追跡調査時におけるワニとの遭遇
(by ウィリアム・C・マックグルー) オリジナルの英文記事へ

 広く同所的に分布するナイルワニとチンパンジーが遭遇した際の観察事例は報告されていない。ワニが霊長類を捕食した事例や化石人類を捕食した考古学的証拠も知られているにもかかわらず、チンパンジーが水辺に近づくことを嫌う習性のためかワニが潜在的捕食者に数えられることは少ない。1970 年代後半に4 年間の調査を行ったセネガルのアシリク山はチンパンジーの生息地としては乾燥しており、頻繁に川を訪れて飲水する。実際にワニと遭遇する場面は観察されなかったが、チンパンジー追跡中の研究者が遭遇した頻度は9 事例(うち死骸1)であった。遭遇頻度は5.2 ヶ月に1 回であり、チンパンジーとワニが遭遇する頻度もこれに近いものと推定できる。


チンパンジーの糞から出るサバの種子とランドルフィアの種子の判別
(by 中村美知夫) オリジナルの英文記事へ

 サバとランドルフィアは、マハレでチンパンジーが好んで食べる果実である。この二種は、果実での識別は容易だが、糞から出てきた種子だけで区別するのは難しく、マハレでの糞分析や種子散布の先行研究では両種をまとめて扱っている。この二種の種子の長さと幅を計測し、判別分析をおこなったところ、この方法で9 割近い種子を判別できることが明らかになった。


野生チンパンジーの若メス間の同性愛相互行為:社会的ふり遊びの例か?
(by 島田将喜) オリジナルの英文記事へ

 メス間同性愛相互行為は、ボノボでは頻繁に観察されるが、野生チンパンジーではめったに観察されていない。マハレの野生チンパンジーの若メス、XP とEJ の間で同性愛相互行為が断続的に2 回くりかえされた。いずれも落ち着いた状況で生じ、明白な機能は認められなかった。1 回目のバウトは、通常の異性間交尾、飼育下のチンパンジーのメス間同性愛相互行為よりもはるかに長く、38 秒間持続した。これらの特徴は、彼らの間の同性愛相互行為が社会的遊びの一つのパタンであることを示唆する。この同性愛相互行為はXP・EJ がそれぞれ「あたかも」オス・メスのようにふるまう、社会的ふり遊びのまれな例かもし れない。




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