第4回 トンガリ頭の「きのこの山」
— ムトゥリ

中村 美知夫


 某製菓会社のチョコレート菓子に、「きのこの山」という人気商品があります。

 今回紹介するムトゥリは、まさにマハレにおける「きのこの山」といったイメージです。開いても傘の直径がせいぜい4 〜 7 センチ、地上に出ている部分の高さもそんなものでしょう。幼菌だと親指をひと回り大きくしたくらいのサイズで、第1回で紹介したマレリアのような巨大キノコがあるマハレにおいては、実に可愛らしいキノコと言えるでしょう。傘は赤茶色、柄は白色をしていて、まだ傘が開ききらない幼菌は、傘の色をもう少し濃くすればまさしく「きのこの山」のような外見です。 ほかの多くのキノコと同様、ムトゥリもまた雨季の到来とともに見られるようになります。小型なせいか、他の大きなキノコよりはやや生えてくるのが早い印象があり、雨季の半ばに入ると次第に見かけなくなります。森林が深いところよりは比較的開けた疎開林などに多く、尾根筋などにも多く生えます。トングウェの人々にとっても、もっとも馴染みのあるキノコのようで、比較的若い世代の人たちもこのキノコは知っているようです。


写真1 しっぽまで掘り起こしたムトゥリの幼菌。地上に出ている部分は全体の半分以下である。


 ムトゥリもまた第2回で紹介したブスワレや前回紹介したムスウェンスウェと同様、シロアリタケ属(Termitomyces)の仲間であると思われます。サイズはだいぶ違いますが、傘のてっぺんがとんがっていること、地下に長いしっぽがあることなどは共通した特徴です(写真1)。ほかのシロアリタケの仲間と同様このキノコも食菌です。ブスワレのように大きくはないし、ムスウェンスウェのように群生もしないので、量を集めるのが大変ですが、注意深く地面を見ながら歩くと、まとまった収穫をすることができます(写真2)。


写真2 2005 年11 月の収穫。


 このキノコは味ももちろんよいのですが、小さいことを活かして、形と色も楽しみたいものです。付いている土を落としたら、手で縦に二つに裂くくらいで下処理は終わり。あとは、野菜炒めに入れるもよし、スープやシチューに入れるもよし。

(なかむら みちお 京都大学)



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