Pan Africa News 20(1)の記事から

タンザニアの保護区外にいるチンパンジーの生息頭数と生息地選択
(by 小川秀司、吉川翠、伊谷原一) オリジナルの英文記事へ

 タンザニアには、ゴンベとマハレ両国立公園の他、リランシンバ、ウガラ、マシト、ムクユ、カロブワ、ワンシシ、ルワジに野生チンパンジーが生息する。全生息地で1994–2011 年に現地調査を行い、衛星画像と地形図をもとにGIS 分析を行うと、ベッドのあった方形区は常緑林の面積割合が高く、地面の斜度が急だった。ベッドは斜度0.6°–30.8°、標高797–1814m、常緑林から0.64kmの範囲にあった。常緑林割合が高く、市街地から遠いほど、生息密度は高かった。生息頭数は1960年代から激減し、国立公園外700頭、公園内600 の計1300頭と推定された。


セムリキのチンパンジーの井戸掘り: 左右差に関する追加データおよび地下水面が重要である可能性
(by ウィリアム・C ・マックグルー、リンダ・F ・マーシャント、シャーロット・LR・ペイン、ティモシー・ウェブスター、ケヴィン・D ・ハント) オリジナルの英文記事へ

 セムリキのチンパンジーは穴(井戸)を掘って水を飲む。掘られた後に残された砂の山が左右のどちらかに偏っていれば、掘る際に利き手があることになるが、2006年のデータでは左右差はなく、2008年にさらにデータを追加したが、やはり左右差は見つからなかった。ただし、2006年に比べると2008年の井戸は浅く、葉のスポンジが使われることも少なかった。おそらく2008年には地下水面が高く、深い井戸を掘る必要がなく、井戸が浅いために道具を使う必要性も少なかったのであろう。乾燥地のチンパンジー研究ではそうした地下水面といった要因も今後検討する必要がある。


ボッソウ(ギニア)のチンパンジーによる鳥の捕食:新事例
(by ユ・リラ、ボニファス・ゾグビラ、松沢哲郎) オリジナルの英文記事へ

 肉食頻度が低いことで知られるボッソウ・コミュニティで、推定54歳のメスが2羽のノドグロバンケンの雛を同時に捕獲し、少なくともそのうち1羽の一部を食べたのを観察した。もう1羽は叩きつけたときに発せられた鳴き声に捕獲者が驚き、殺すのをためらう様子が観察されたが、移動したため、捕食したかどうかは不明である。ボッソウのチンパンジーが鳥類を捕食した観察としては2例目である。


イヨンジ・コミュニティ・ボノボ保護区(コンゴ民主共和国)を新設したプロセス
(by ジェフ・デュパン、アンドルー・ファウラー、フィラ・カサレヴォ、坂巻哲也、リンゴモ・ボンゴリ、セオ・ウェイ、デヴィッド・ウィリアムズ、古市剛史、チャーリー・ファシュー) オリジナルの英文記事へ

 ボノボの狭められた生息域のうち良好とされる9万8千km²弱の約4割は保護区に指定されている。アフリカ野生生物基金は、ボノボ個体群の存続のため保護区間ネットワークを構築する活動を行ってきた。とくにここでは、前号で報告したイヨンジ保護区新設について、マリンガ・ロポリ・ワンバ3地域からなる7万4千km²のランドスケープの15%を連結保護区にしてネットワーク化しようとするハートランド保全プロセスを適用した結果、地域住民、研究者、環境NGOの連携が功を奏して、行政の調査・評価・法令へと結びついた事例として報告する。  




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