第21回 パフィー

紹介者 島田 将喜

 

 今回私が紹介するのは、パフィーという2000 年3 月ころに生まれた現在満13 歳の娘です。実はこのコーナーで、パフィーが登場するのは今回で三回目です。第10 回で実母のピンキーが、第7 回で養母のグェクロが、いずれも西田利貞さんにより紹介されており、そこに彼女らの実子・養子として兄のプリムスとともにパフィーが登場します。コーナー常連の彼女を今度は主役として紹介するのは、私が個人的に彼女にとても強い愛着を感じているからというのが理由の一つです。というのは彼女が2 歳を過ぎたころにパフィーと名付けたのが、当時マハレに長期滞在してピンキーを調査対象としていた私なのです。そんなわけで(名付けの)親バカ?による娘の自慢話と思ってお読みいただければと思います。

 さて現在、兄のプリムスはM 集団の第一位と目されるまでに出世し、あまり妹のパフィーと直接かかわることは少ないようです。しかしたまに二人が毛づくろいを交わしているのを見ると、ああ二人は兄妹だったっけ!と少し安心します。そうして改めて見ると顔つきは兄妹でたしかによく似ていますが、容姿以外にも二人がよく似ている行動上の特徴があります。それは毛づくろいの際の唇の動きです。他の個体の体を毛づくろいするたびに、唇を盛んにパクパクと開閉して音を出します。この行動をリップスマックといい、やり方や頻度、音の大きさなどには個体差があることが知られていますが、この兄妹で「パクパク具合」がよく似ているのです。リズムを書き表すのは難しいのですが「パク・パク・パク・・、パクパクパクパクッ・・!!」と、まあこんな感じです。こんな妙な癖?まで、兄妹で似てしまうことがあるようです。

 もう一つ血のつながりについて考えさせられる話を紹介しましょう。実母ピンキーの性皮は巨大でそれが名前の由来になったことは西田さんも紹介されています。私が2008 年の調査でワカモノになったパフィーを最初に見たとき、彼女のふくらみ始めた性皮の形状が、ピンキーのそれとサイズが違うだけでそっくり(つまり相似)なことに、私は感心したものです。最近マハレから帰国された花村俊吉さんの報告によれば、パフィーは集団を出てゆかないまま発情し、集団内のオスたちに「モテモテ」だったとのことです。子持ちでない若いメスがそれほどオスにモテるというのは珍しいことなのですが、母親ゆずりのあの性皮には、オスを大いに魅惑するところがあるのでしょう。年ごろのパフィーが群れを出てゆくにせよ、出てゆかぬにせよ、名付け親としては複雑な気分です。


写真 コドモと遊ぶパフィー


(しまだ まさき 帝京科学大学)





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