第1回MWCS特別奨学金事業 奨学生からの手紙②

マハレ野生動物保護協会(MWCS)日本代表 保坂和彦

 第1回特別奨学金事業の受給者ブタティ・R・ニュンドー氏(27)から、2年コースが終了した時点の奨学金レポートが届きましたので、ここに概要を掲載します。2010年8月に入学したムウェカ・アフリカ野生生物管理カレッジ(野生生物管理学ディプロマ2年コース)での課程も2012年5月で終了しました。レポートを見て分かりますように、タンザニアの恵まれた自然環境をフィールド実習の場として贅沢に活用する教育内容を満喫しつつ真摯に学業に取り組んだ様子です。本人の申告によれば、12月に最終試験を受験し、正式にディプロマが授与されるのは来年10月の見込みとのことです。協会が奨学生の義務として課した卒業後3ヶ月間の教育ボランティア活動は前倒しして、来年早々、彼が帰郷した直後から始めてもらう予定です。カトゥンビ小学校かブヒング中学校のどちらで活動をするか、目下、本人と打ち合わせているところです。その後、協会としても彼が修得した専門的知識・技術が活かされるキャリアに就くことができるよう支援していきたいと考えています。こうして地元出身の若者がマハレの野生生物保全にリーダーシップをとる日が来ることを私たちとしても待ち望んでいます。

(ほさか かずひこ 鎌倉女子大学)


ムウェカでの2年間を終えて

ブタティ・R・ニュンドー

 最初に、ムウェカへの就学を支援してくださったマハレ野生動物保護協会(MWCS)に厚く御礼を申し上げます。この奨学金は、私だけではなく高等教育の機会に恵まれなかったトングウェの子弟にとって大きな力となるでしょう。トングウェの地域社会の発展の助けにもなります。


写真1.レポートに追われる充実した学習の日々


 ムウェカでの2年次は、カレッジのキャンパス、近隣の村、国立公園、動物保護区でのフィールド実習が盛りだくさんでした。


写真2.野外でのフィールド実習


 2年次の第1セメスターは、まずコミュニティ・コンサベーション、野生生物資源利用法、火器使用法、野生生物法の執行や野生生物管理・技術について学びました。実践的な経験を積むため、アフリカ最大の保護地域として知られるセルー動物保護区での大型哺乳類の狩猟を含むフィールド演習、カレッジ所有のクウァクチンジャ野生生物回廊でのフィールド実践演習、タランギーレ国立公園での準軍隊式実地訓練を体験しました。


写真3.剥製の解説


 第2セメスターは、研究計画法や資料収集法、レポートの書き方に関する学習に始まり、ディプロマ取得の要件の一つでもある研究活動に従事しました。私はウズングワ山塊国立公園周辺のヒトとゾウの関係についてコスト・ベネフィット分析による研究をしました。その他、保護地域周辺の地域コミュニティに対する野生生物保全教育、保護地域の経済・財務・管理運営のためのインフラ整備についても学びました。最後は、保護地域の管理運営計画について、管理ゾーンシステム、保全上の問題の特定、利害関係者の参画、総合管理運営計画書(GMP)の作成などの方法を学びました。そして、アルーシャ国立公園に3日間滞在し、GMP作成のための情報収集を体験しました。 ムウェカはアフリカの野生生物、その保全・保護・管理について学ぶ最高のカレッジです。2年前、ここに入学するまでにはできなかった経験をたくさん積むことができました。



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