京都大学人類学講座50周年記念会に出席して

五百部 裕


 2012年11月11日(日)、木々の葉が色づきはじめた京都において、京都大学人類学講座の50周年を祝う会が開催された。現在は、京都大学大学院理学研究科生物科学専攻動物学系に属する人類学講座は、1962年に今西錦司教授(京都大学人文科学研究所の教授と併任)、池田次郎助教授、伊谷純一郎助教授、葉山杉夫助手、杉山幸丸助手の5名をスタッフとして京都大学理学部に創設された「自然人類学講座」を出発点とする。そして1981年には自然人類学講座から分かれる形で「人類進化論講座」が設立された。その後1995年の大学院重点化により組織上は大講座制が取られ、自然人類学講座と人類進化論講座を合わせた「人類学講座」となり現在にいたっている(それまでの「講座」は「研究室」と呼ばれるようになった)。


 そもそもマハレでのチンパンジーの調査につながるアフリカでの類人猿の調査を1958年に開始したのが今西教授と伊谷助教授であり、この講座からは数多くの人類学者、霊長類学者を輩出してきた。当然この講座は、マハレにおける研究とも深い関わりを持っている。例えば、1965年にマハレで最初にチンパンジーの調査を行った伊沢紘生氏やそのあとを引き継ぐ形で調査を行い、チンパンジーの餌づけに成功しマハレでの長期継続調査を主導してきた西田利貞氏はこの講座の出身であり、西田氏はまた人類進化論講座(研究室)の教授を1988年から2004年まで務められた。さらにここではいちいちお名前を挙げることはしないが、このお二人だけでなく、マハレで調査を行った多くの研究者がこの講座の関係者である。私も卒業研究の際に、人類進化論講座の伊谷教授の指導を受け、1993年から2000年まで人類進化論講座(研究室)の助手を務めさせていただいた。


 さて当日は、会場となったメルパルク京都に100名あまりの関係者が集まり盛大な会となった。15時に開会し、最初に山極壽一現教授よりご挨拶があり、引き続き石田英實元教授のご挨拶、そして講座の最初の大学院生であった西邨顕達氏のご発声による乾杯と進行していった。途中、病気のためご臨席できなかった池田元教授からのビデオレターや、多くの関係者から寄せられたさまざまな時代の写真などが披露され、昔話に花の咲く楽しい時間を過ごした。18時30分に閉会したものの、多くの参加者が二次会、三次会…と流れていき、旧交を温めつつ、人類学、そしてマハレの未来を語り合う貴重な一日となった。

(いほべ ひろし 椙山女学園大学)



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