カトゥンビ村の小学校へ

花村俊吉

 
マハレ野生動物保護協会ではマハレの近くに住む人々の暮らしを応援する活動を続けています。前回に引き続き今回も、GRASP-Japan(大型類人猿保全計画日本委員会)の資金援助を得ておこなった活動をご紹介します。 (編集部)

 カトゥンビ村は、マハレ山塊国立公園のすぐ北側にあります。マハレのチンパンジー調査プロジェクトに協力してくれている調査助手の多くも、この村で生活しています。今回私は、6年ぶりにマハレを訪れ、短期間ですがチンパンジーの調査をおこないました。その際、このカトゥンビの小学校で不足していると聞いていた学用品等を、大部分、GRASP-Japanの資金援助を受けて届けてきました。

 2012年5月8日、文具店などが一通り揃っているキゴマという街で買い出しをおこないました。鉛筆や消しゴム、鉛筆削り、ノート、辞書、ボールペンは生徒用の黒ペンと先生用の赤ペン、それからサッカーボールとバスケットボールをひとつずつにギター一本、というのが今回購入した物品です。翌朝にはその荷物をボートに積み込み、タンガニイカ湖を南下して昼過ぎにはカトゥンビに着くはずでした。しかし、生憎の天気で途中から嵐になり、夕方遅くの到着になってしまいました。そこで、長い間チンパンジー調査プロジェクトに協力してくれているキトペニさん宅に荷物だけ置かせてもらい、後日改めて小学校に届けることにしました。

 それから約10日後、再度カトゥンビを訪れ、荷物を小学校に届けることができました。これまでマハレで調査をしてきたなかで、このカトゥンビの人たちと交流する機会は度々ありましたが、今回のように環境教育の一環として小学校に物品を届けるというのは初めての経験でした。そのため少し緊張していたのですが、荷物を小学校に運んでいる最中から付近の子どもたちが集まってきて、文具やボールなど、すぐにでも使いたいと喜んでくれたその笑顔を見て、そんな緊張は吹き飛びました。


カトゥンビの小学校にて(撮影 花村俊吉)


 その子どもたちに手を引かれて小学校に着くと、カトゥンビの村長(写真:左からふたり目の方)と先生ふたり(左端と右からふたり目の方)が出迎えてくれました。写真右端にいるのが、この日も荷運びの手伝いや、村長や先生たちにGRASP-Japanの活動目的などを伝える私の拙いスワヒリ語を直してくれたキトペニさんです。先生たちは、教科書がまだまだ不足していると言っていましたので、ここで使われている教科書を見せてもらいましたが、その全てがたくさんの子どもたちに使い込まれていました。また次にこの小学校に学用品等を届ける機会があれば、教科書を届けたいと思います。

 後日、マハレでチンパンジーの調査をしているときに、チンパンジーの観察にやって来ていた別の村の小学生たちと出会いました。その子どもたち(と先生)がとても楽しそうにチンパンジーを観察しているのを見て、カトゥンビをはじめ、マハレ周辺の他の村の子どもたちにもこうした機会があればよいなと強く思いました。

(はなむら しゅんきち 京都大学)


   


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