第1回MWCS特別奨学金事業
 奨学生からの手紙

写真1.ムウェカのアフリカ野生生物管理カレッジ(背後に聳えるのはキリマンジャロ山)


マハレ野生動物保護協会(MWCS)ジャパンでは、故西田利貞前代表の発案により2010年8月から始めた第1回特別奨学金事業を継続しています。奨学金受給者でカトゥンビ出身のブタティ・R・ニュンドー氏(26)から、受給の条件として求めた奨学金レポート(中間報告)が届きましたので、ここに概要を掲載します。彼が学ぶムウェカ(アルーシャ州)のアフリカ野生生物管理カレッジは、美しいキリマンジャロ山が背後に聳える恵まれた景観の短期大学です(写真1)。200人前後の学生(少なからぬ留学生を含む)が将来、野生動物保護の仕事に就くための技術と教養を身につけるため、ここに学んでいます。現在、ニュンドー氏は2年目のカリキュラムに取り組んでおり、来年6月には野生生物管理学のディプロマを取得する予定です。トングウェの若い子弟でこの資格を取得するのは、別の基金を得てすでに卒業したカトゥンビ出身のサイディ・J・カテンシ氏(29)に続き二人目となります。彼らの世代が「地域による地域のためのマハレの自然保護」をリードする日が来ることを期待したいと思います。 (編集部)

ムウェカでの最初の1年を終えて

ブタティ・R・ニュンドー

 はじめに、ムウェカ・アフリカ野生生物管理カレッジ(野生生物管理学ディプロマ取得2年コース)への就学を経済的に支援してくださったマハレ野生動物保護協会(MWCS)に厚く御礼を申し上げたいと思います。この奨学金は、私だけではなく高等教育の機会を待ち望んできたトングウェの子弟にとって大きな力となるでしょう。トングウェの地域社会の発展の助けにもなると思います。


写真2.ブタティ・ニュンドー氏。鳥類の剥製標本とともに。


 1年目の2セメスターのカリキュラムを終え、経験豊富な専門家の先生方が施すトレーニング・プログラムを通して、私は野生生物管理学の理論や実践的な技術や方法を身につけることができました。たとえば、動植物の同定法、植物標本作製法、野生生物の保護管理に役立つ通信技術、植生タイプ別動植物調査目録の作り方、野生生物にやさしく地域社会の振興に貢献するエコツーリズム、過酷環境におけるサバイバル技術(単独探検法、登山術、地図利用法、救急救命法)、動物生態学、生態系調査法、野生生物保全学(法令、制度、戦略の理解を含む)など、多くのことを学びました。

 ムウェカでは、さまざまな保護区に恵まれたタンザニアならではの実践的なフィールド実習の機会がありました。たとえば、アルーシャ国立公園では、哺乳類・爬虫類・鳥類の野外同定、哺乳類の行動観察、森林生態系の垂直構造の実習をしました。サダニ国立公園では、生物多様性アセスメント法の実習をしました。キリマンジャロ国立公園では、最低装備での単独探検、キリマンジャロ山の3500―5895 mの高地トレーニングをしました。モシやムワンガでは、チームワークやコンパス・GPS・TCPなどの活用による平地探検の実習を行いました。タンガのパンガニ地区ではマングローブ林、砂浜、河口域、珊瑚礁など海洋・沿岸部生態系の実習を行いました。そして、セレンゲティ国立公園では、大型哺乳類の行動域、植生調査、移入種が生態系に与える影響(ビクトリア湖に導入されたナイルパーチの事例研究)、ヌーの大移動がセレンゲティ〜マサイマラの生態系に及ぼす影響などを実地で学ぶ機会がありました。

 こうして、かつてない量の知識を修得することができた1年間はとても有意義なものとなりました。



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