第16回 カリオペ

西田 利貞

 

 カリオペは、私の最もなじみの薄い大人の雌である。写真を撮って識別したのは1973年と古いが、ひじょうに臆病だったため、樹上で休んでいるのを遠くから眺めるのが関の山だった。1981年にはワカモノ期の娘クラブとコドモ期の娘ココスがいることがわかった。クラブを10歳とし、初産を13歳とすると2010年現在、10+13+29=52歳になる。Mグループで記録された最年長記録保持者である。



 私たちが知っている限り最初の息子は1987年生まれで、当時の米国大統領に因んでカーターと名づけた。次男はカドムス、これが最後の子かと思っていたら、1997年、推定39歳のときに赤ん坊を抱いて出てきたのでみなが驚いた。高齢出産のせいか、カルメンの成長は遅く一歳年少のイマニ等の遊び仲間に体格で追い越された。
 カリオぺが比較的よく見られるようになったのは1990年以降で、私が見た限りでは、子供たちをよく毛づくろいしていた。カリオぺが大人の雄ドグラと遊ぶのを見たことがある。対面して座って頭を下げ、顔をドグラの胸に押し付けて甘えたような素振りを見せていた。また、カリオペは発情すると第一位雄のファナナをつついたり、キスしたり、指相撲をしたりして、いちゃついた。なかなか隅に置けない伯母はんである。

(にしだ としさだ (財)日本モンキーセンター)


   


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