第8回 マングース

五百部 裕

 

 マングースは、食肉目(ネコ目)マングース科(Herpestidae)に属する動物たちのことで、アフリカ大陸からユーラシア大陸南部、さらにはマダガスカルや東南アジア島嶼部などたいへん広い範囲に分布しています。二足立ちした姿が人気で、アフリカ南部の乾燥地帯に生息するミーアキャット(Meerkat:Suricata suricata)もマングースの仲間です。多くの種が、IUCN(世界自然保護連合)のレッドリスト(絶滅のおそれのある生物のリスト)に掲載されず、一応絶滅の危機には瀕していないとされています。A Quarter Century of Research in the Mahale Mountains: An overview (Nishida, 1990)のTable 1.1によると、マハレには、フサオマングース(bushy-tailed mongoose:Bdeogale crassicauda)、シママングース(banded mongoose:Mungos mungo)、シロオマングース(White-tailed mongoose:Ichneumia albicauda)の3種が生息していることになっています。しかしマングースの新しい分類と分布域によると、このうちフサオマングースはマハレ周辺には生息しないことになっており、別の種である可能性が高いと考えられます。いずれにせよ、マハレには数種のマングースが生息しているのは間違いありません。



写真 マハレのシロオマングース(撮影・中村美知夫氏)


 マングースは、いずれも短足で細長い体をしており、長い尾を持っています。肛門腺と呼ばれる器官を持っており、ここからの分泌物によって個体間のコミュニケーションやなわばりの維持が図られていると考えられています。シロアリや甲虫の幼虫などといった昆虫や、カエルやトカゲなどの小型の脊つい動物を主食にしている種がほとんどです。ただこうした食物が不足するときには、果実などの植物性の食物を食べることもあるようです。かつて沖縄観光の目玉の一つだったハブとマングースの決闘ショーでも有名ですが、マングースは見かけによらず、毒ヘビを殺すことができるほど俊敏です。
 シロオマングースは、名前の通り白っぽい長い尾が特徴的なマングースです。地域によって多少の変異はありますが、体全体も白っぽい色をしています。多くのマングースが4本指なのに対して、シロオマングースは5本指です。彼らは、他の多くのマングースと同じく夜行性で単独生活をおくっています。シママングースは、これも名前の通り、背中の縞模様が特徴的なマングースです。彼らはマングースの仲間では珍しく昼行性で、ときに40頭にもなる大きな群れを作って生活しています。
 カンシアナのキャンプには、ときどき残飯などをあさりにマングースが現れます。驚かせなければ1時間以上もキャンプ近くをうろついていることあります。こうした動物をキャンプにいながらにして観察できるのも、フィールドワークの楽しみの一つでしょう。

(いほべ ひろし 椙山女学園大学・人間関係)


   


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