野生チンパンジーの遊び

遊びの研究の重要性

 私たちヒトも、ヒトにもっとも近縁な動物のチンパンジーも、ともに大変「遊び好き」です。またヒトもチンパンジーも、その多彩な能力や個性を遊びの中で発揮します。チンパンジーの遊びをよく知り、ヒトの遊びと比較することで、私たち自身にとっての遊びの重要性や、ヒトの遊びの起源や進化を探ることができます。
左手でメスを毛づくろい、右手で赤ん坊をくすぐるお母さん

多様な遊び方のレパートリー

 野生チンパンジーの遊び方はとても多様です。木の枝を遊び相手に「見立て」たり、「音遊び」をするなど、想像力をもちいた遊びも豊富です。

表 マハレで観察される遊び方


2頭の若いメスの性的遊び(ホモセクシュアル遊び)

老齢オス(手前)と大人オス(奥)がくすぐり合う ©松阪崇久

音遊び(古い水瓶を叩く) ©松阪崇久

いくつになっても遊ぶ

 ヒトと同じように、チンパンジーは大人になってもよく遊びます。お母さんは自分の赤ん坊と遊ぶことが多いです。面白いことに、きわめて老齢のオス・メスも、お互いを相手に、あるいは群れの子どもたちを相手によく遊びます。
老齢のメスが、別のメスの赤ん坊と遊ぶ


お母さんと赤ん坊の遊び

二人で遊ぶ

 1頭のチンパンジーは一度に別の1頭を相手に遊ぶことがほとんどです。サッカーのように3人以上が集まり一度に大勢が参加できる遊びをするヒトとは、この点が異なります。でも時間がたつと遊び相手がどんどん交替してゆくので、結果として大きな遊び集団をつくることがあります。


2頭の子どもが、場所の特徴を利用して、追いかけっこ、取っ組み合いを繰り返す

子ども中心の「遊びネットワーク」

 チンパンジーたちは遊びを通じて、集団のほとんどのメンバーと直接、間接につながり合いをもつことができます。遊びを通じた関係性の網目(ネットワーク)の中で中心的にふるまうのは、大人ではなく子どもたちです。


図 遊びネットワークの例。〇や□の記号はチンパンジー1個体を、アルファベット2文字はその名前を表す。


文責:島田将喜