チンパンジーの味覚の進化論

① チンパンジーはいろいろなものを食べる


イサカマの果実(Myrianthus arboreus


イスウェの葉髄(Pennisetum purpureum


朽木からアリを取って食べる


サル(アカコロブス)を狩る

② しかし、何でも食べるわけではない

例えば、植物だけでも、約200種を食べるが、食べない植物も多い。
私たちヒトと同様に、『食べていいものを食べる』という食物選択をしている。

③ 食物品目を決める3つの要因

食物選択を可能にする要因として、遺伝子、環境、学習の3つがあげられます。

環境は手の届くものだけを食べられる。学習は大人が食べるのを見て学ぶということです。

最近の研究で、遺伝子(味覚)も第3の要因として影響していることが明らかになってきました。

④ 苦味受容体遺伝子
〜同じ食べ物でも、個体によって苦味の感じ方が異なる〜


苦味受容体遺伝子は、食物中の「苦味」を受け取る苦味受容体を舌の上に作ります。

この遺伝子に変異があると苦味の感じ方に個体差が生まれます。こうした違いが、チンパンジーに 存在していることがわかりました。


苦味の多くは毒です。
チンパンジーは、「食べてはいけないもの」だけを苦く感じるように、苦味受容体を進化させて、生まれつき、ある程度の食物品目を決めています。

毒は時として薬になります。チンパンジーはときどき苦い植物を食べますが、実はチンパンジーの遺伝子にとってはそんなに苦くなく、摂取しやすいよう進化した可能性も考えられています。
▲食痕の残る苦い植物 Vernonia amygdalina


文責:早川卓志