野生チンパンジーの孤児と養子取り

野生チンパンジーの子守り行動

 チンパンジーのアカンボウは、4〜5歳くらいまで母親の母乳に依存して暮らします。しかし、きょうだいや子供のいないメスなどがアカンボウの子守りをすることもあります。
妹の子守りをするシーザー―母親のシンシアが取り戻しに来た

野生チンパンジーの孤児

 母親が死んでしまうと、3歳以下ではまず生きていくことができません。3歳以降では生き延びる可能性がありますが、まだまだ小さいので、誰かに運搬してもらったり、ついて歩く必要があります。オスの孤児はオトナオスに、メスの孤児はオトナメスについて歩く傾向があります。
孤児のワカモノオス、ニック―同じ年の他のオスよりもやや小柄だった

子守り好きのグウェクロ

 グウェクロというメスには自分の子供がいません。おそらく不妊だったのです。そのためか、グウェクロは、他のメスのアカンボウを子守りするのが大好きでした。これまでにいろんなメスの子供のアカンボウを運んだり、毛づくろいしたりしてきました。母親との間にも信頼関係があったようです。
クリスティーナのアカンボウの子守りをするグウェクロ―知らない人が見たら親子に見えるだろう

3歳で孤児になったピピ

 マハレでは3歳で孤児になった個体が生き延びた例があります。ピピは、3歳9ヶ月で母親を病気で亡くしました。その後しばらくして、ピピとグウェクロの間に強い絆が結ばれ、ピピは常にグウェクロについて歩くようになりました。グウェクロもよくピピを毛づくろいしました。
養子に取ったピピを毛づくろいするグウェクロ

孤児になったオスは早死にする?

 長期データを活用して、これまでマハレで孤児になった37頭のオスを対象に分析をしたところ、すでに離乳をしているはずの5歳から13歳のオスでも孤児になると早く死んでしまう傾向があることが分かりました。母親が授乳以外の何らかのサポートをしている可能性があります。
母親のおっぱいを吸うアガノ―離乳してからも母親のサポートは続くのだろうか?


文責:中村美知夫