毛づくろいとシラミとベッド

みんなで集まり、毛づくろい

 毛づくろいは親和的な行動です。誰と誰が毛づくろいをしているか調べることで、個体間の社会関係を推し測ることができます。
 チンパンジーの毛づくろいには、大勢の仲間たちが集まって毛づくろいをするという特徴があります。多いときには、同時に7個体が連なって毛づくろいすることもあります。
 時間をずらして、毛づくろいの輪に加わることもあります。ひとつの毛づくろいの輪に入れ代わり立ち代わり参加したチンパンジーを数えた人がいるのですが、多い時で23頭になったそうです。じつにマハレM集団の1/3ものメンバーが参加した計算になります。

シラミを取り、葉の上でつぶす

 チンパンジーの体表にはチンパンジージラミが寄生しています。チンパンジーは毛づくろいで毛をかき分け、毛の間に潜むシラミを探し、指や口で取り除きます。
 マハレのチンパンジーは、毛づくろい中によく葉を取って、その葉に口をつけたりします。これは「リーフグルーミング」と呼ばれる行動で、取ったシラミを葉の上にのせ、指で押しつぶす行動です。

 そしてこれがその押しつぶされたシラミです。腹部のあたりが曲がっています。シラミは、 3ミリほどの小さい生物なので、チンパンジーは葉を用いて扱いやすくしているのでしょう。

シラミ、マダニ、ノミの違い

 どれも動物の血を吸う寄生虫ですが、その生活環は多様です。シラミは一生を動物の体の表面で過ごしますが、マダニやノミは吸血後に動物から離れます。マダニは脱皮のときに地面に降りるので、そのたびに宿主を替えます。ノミは動物の巣材の中で、卵から蛹までの期間を過ごします。


ベッドで眠る

 チンパンジーは木の上で、枝葉を使ってベッドを作り、その上で眠ります。チンパンジーは広い遊動域を歩き回るので、ベッドはその日にたどりついた場所に作ります。ベッドは毎日作り替えられるので、ベッドの上でノミなどが繁殖することはありません。(私も寝て見たことがありますが、じつにすがすがしいベッドでした。)
 チンパンジーは夕方に眠りにつきますが、朝までぐっすり眠っているわけではありません。夜中に観察すると、深夜に大騒ぎをする声が聞こえます。騒ぎの直前には排泄する音が聞こえることが多いことから、チンパンジーは夜中にトイレで目が覚めてしまうと考えられます。


文責:座馬 耕一郎