野生チンパンジーの一生:生まれてから死ぬまで



 赤:アカンボウ期桃:離乳期黄:コドモ期緑:ワカモノ期青:オトナ期紫:老齢期

0歳〜 アカンボウ期

出生体重はおよそ1.8キログラム。移動の際は母親のお腹につかまり、夜は母親と同じベッドで眠ります。

5か月〜 母親以外の他個体と遊び始める

5か月頃〜 口にものをいれ始める
生後5か月頃から、チンパンジーのアカンボウは周囲にあるものを口に入れ始めます。枯れ枝や落ち葉など、なんでも手や唇で触れ、舐めたり噛んだりしながら、世界を探索しているようです。そのうち、母親の食べかすを拾って食べたり、母親の食べているものを少しもらって食べたりしながら、徐々に食べ物を学習していきます。

6か月〜 母親から離れて探索し始める

3歳頃〜 アリ釣りを始める

4歳頃〜 毛づくろいを始める


4歳〜5歳頃 離乳期

4−5歳頃、母親はお乳を吸おうとするアカンボウをやんわりと避けたり、移動時に背中へ乗ろうとするアカンボウを前へ押しやって自分で歩くよう促します。アカンボウは母親の注意をひくため、観察者の方へやってきて、こちらが何もしていないのに「人間にヤラレター!」と言わんばかりに叫びながら母親の方へ駆けて行き、ここぞとばかりに母親に甘えたりします。

5歳頃〜 コドモ期

ひとりで寝たり長距離を移動する

9歳頃〜 ワカモノ期

メスは10歳頃に性皮の最大腫脹が観察され、オトナのオスとよく交尾をするようになります。多くのメスは生まれた集団を出て、別の集団へ移籍します。 オスは9歳頃に初めて射精が観察され、母親と離れて他のオスたちと一緒に遊動することが多くなります。

15歳頃〜 オトナ期

メスは14歳頃に初めて出産します。出産後は、多くの場合その集団にとどまり子育てをします。順調に子が育てば、およそ5年の間隔で次の子を出産します。

オスは16歳頃から集団のすべてのメスからパントグラント(挨拶行動)を受けるようになります。また、プレハブを叩くなどの誇示行動をよく行うようになります。

40歳頃〜 老齢期

40歳頃から、老眼や白内障などの老化現象が見られるようになります。マハレで確認された最長寿記録は推定で53歳です。しかし、私たちの50年の調査ではまだ、ある個体の生まれてから死ぬまでを観察するには至っていません。チンパンジーの一生を知るためには、これからも長期調査を継続することが重要なのです。


文責・写真:松本 卓也
写真提供:座馬 耕一郎・保坂和彦