タンザニア 野生チンパンジーの生息状況


野生チンパンジーの分布

チンパンジーはアフリカの赤道付近の熱帯林や乾燥林に生息しています。生息域のもっとも東に位置しているのがタンザニアです。



タンザニアのチンパンジーの分布
タンザニアのチンパンジーは、マハレやゴンベといった国立公園だけでなく、ウガラ、リランシンバ、マシト、ムクユ、カロブワ、ワンシシ、ルワジといった公園以外の地域にも分布しています。


調査中の現地アシスタント

公園外のチンパンジーの密度変化

 チンパンジーは毎晩樹上にベッドを作りその上で眠ります。このベッドを数え、国立公園外に生息するチンパンジーの密度を推定しました。その結果、2000年代は、1960年代に比べ5地域でチンパンジーが減少していました。とくにリランシンバ、ムクユ、カロブワ、ワンシシで急減しています。
チンパンジーのベッド




マハレのチンパンジーの分布

 マハレでは森林の発達した湖岸付近や河川沿いにチンパンジーが分布しています。調査ルートが異なっており直接の比較はできませんが、過去と現在でほぼ変化していないといえます。


チンパンジーの生活を脅かすもの

 国立公園外では1989年頃から建材・家具に利用されるムニンガ(Pterocarpus angolensis)が択伐されるようになりました。これはチンパンジーのベッド作成にも利用されている樹種です。また、地域によっては畑の開墾のための森林伐採や、チンパンジーの密猟もみられます。とくに生息数が急減したリランシンバでは、1997年に難民キャンプが設立され、難民による伐採や密猟がおこなわれていました。  これらの人間活動はチンパンジーの生息数に負の影響を及ぼしています。科学的データをもとに、地域に合わせた適切な保全計画を立て、実行に移すことが必要とされています。
樹木の択伐


農地の開墾


密猟の罠


文責:吉川翠、座馬耕一郎