Pan Africa News 28(1–2)の記事から |
単独のチンパンジー母子はヒョウの頻繁な音声に関心を示さず (by 中村美知夫) オリジナルの英文記事へ ヒョウとチンパンジーが同所的に生息する場所では、前者は後者の潜在的捕食者である。しかしながら、マハレでのこの両種の関係はそう単純ではない。チンパンジーがヒョウに食われることもあれば、チンパンジーがヒョウの仔を襲うこともあり、チンパンジーがヒョウから獲物を奪うこともある。本報告は、マハレのチンパンジー母子が単独でいる際にヒョウの声が頻繁に聞こえた際の事例である。ヒョウの声は断続的に200分以上にわたって、ときには母子から120 mほどの近さから聞こえていたに関わらず、母子がおびえたり気にしたりする様子は観察されなかった。今後もマハレのヒョウとチンパンジーの複雑な関係についての情報を蓄積していく必要がある。 ウガンダ・カリンズ森林保護区においてチンパンジーがウロコオリスを捕食した初の観察事例 (by 白澤子銘,竹元博幸,橋本千絵,徳山奈帆子) オリジナルの英文記事へ チンパンジーはさまざまな脊椎動物を捕食するが、肉食の頻度や獲物の種類は個体群や集団によって異なることが知られている。本稿では、ウガンダのカリンズ森林保護区において、チンパンジーがウロコオリスを捕食した初の観察事例を報告する。ウロコオリスはいくつかのチンパンジーの長期研究フィールドに生息するが、チンパンジーがウロコオリスを捕食したという報告はまれで、過去にシエラレオネのウタンバ-キリミ国立公園において1例が記録されたのみである。今回の事例では3頭のオスが肉を摂食し、そのパターンはカリンズのチンパンジーが多く捕食するサル類を食べる際のものに酷似していた。 野生チンパンジーのアカンボウによる遊びとしてのリーフグルーミングのシミュレーション (by 島田将喜) オリジナルの英文記事へ タンザニア・マハレ山塊国立公園の野生チンパンジーのアカンボウが、リーフグルーミング行動を遊びの一形態としてシミュレーションした。リーフグルーミングは外部寄生虫除去の機能をもつと考えられ、マハレM集団のチンパンジーの慣習的な行動であるが、どのようにして獲得されるのかは分かっていない。3.5歳のメスのアカンボウKP20が、母親が社会的毛づくろいに従事しているすぐそばで、リーフグルーミングをシミュレートしていることが観察された。この行動は、遊び行動の5つの基準と一致する特徴を示しており、マハレのアカンボウのリーフグルーミングの技術獲得に役立つ可能性が示唆された。この事例は、道具使用行動の発達における遊び行動の重要性を示している。 マハレのチンパンジーによるアカコロブスの季節的狩猟 (by 保坂和彦, 中村美知夫, 五百部裕, 高畑由起夫) オリジナルの英文記事へ 1990年代以降、マハレのチンパンジーによるアカコロブス狩猟が習慣化するにつれ、チンパンジーの群れが大きくなる8〜10月に狩りが集中するようになった。獲物のアカコロブスは、とくにアカンボウが他の年齢層に比べて、7〜9月に頻繁に捕獲される傾向があった。 チンパンジーのオスの年齢はアカコロブスザルの狩猟成功率に影響する (by 保坂和彦, 中村美知夫, 五百部裕, 高畑由起夫) オリジナルの英文記事へ マハレのチンパンジーを対象に1976〜2010年に収集したデータを用いて、オスのチンパンジー個体のライフヒストリーにおけるアカコロブス狩猟の長期的変化を調べた。オスのチンパンジーがアカコロブス狩猟に成功した相対頻度(zスコア)は、加齢に伴って逆U字型の分布を示した。狩猟成功率はオスの年齢が8歳から20歳にかけて上昇し、20〜35歳のオトナオスが最も高い頻度で獲物を捕った。39歳より高齢のオスのチンパンジーがアカコロブスを殺した事例はなかった。これらの結果は、オスのチンパンジーの社会的地位の経年変化を理解する上で重要な意味を持つ。 第41号目次に戻る |