マハレのチンプ(ん?)紹介    
第9回 ワクシ

紹介者 西田利貞

   ワクシ

 ワクシの名づけ親は、長谷川真理子さんである。Mグループの縄張りの南部で彼女を見ることが多かったから、クシ(南風)という名がついた。1981年のことである。当時、4-5歳くらいの娘カンタンバを連れていた。この娘が最初の子であり、13歳で生んだと仮定すれば、ワクシは現在43歳ということになる。30代後半から、老眼になり、毛づくろいするとき顔を離すようになった。私を驚かせたのは、40歳を超えてから、2度も出産したことである。不幸にも病気がはやって、2人とも死なせてしまった。この結果は、チンパンジーにはヒトにみられるような更年期(メノポーズ)はないことを示している。ワクシは臆病だったが、息子アロフが離乳期を迎えた1985年頃、私は彼女を観察対象に加えた。ワクシは頑丈な体つきだが大柄というほどではない。しかし、アロフは赤ん坊時代から腕脚が長く、大物になると思われた。おそらく名物ボス、ントロギが父親であろう。彼女は代々のアルファ雄と仲良くして、子どもを順調に生み育ててきた。しかし、1988年生まれの次女アイは、お嫁に行く年齢になったとき病気になり、痩せ衰え脚をひきずって歩くようになった。そして、3年間の闘病後、14歳で亡くなったのは最近の最も悲しい事件の一つだった。

(にしだ としさだ (財)日本モンキーセンター)



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