Mグループに新入りメス

中村美知夫

 2005年9月24日、Mグループに新入りのメスが確認されました。前回ターニーがMグループに入ってきたのが2003年の9月ですから、けっこう久しぶりの新人ということになります。ちょうどその数日前には、カンシアナキャンプでは次のような議論?がなされていたころでした。

 中村 「最近新しいメスが入ってきませんねえ…。観光客が多すぎて入れないんじゃないですか。」

 西田 「そうか、それは面白い仮説じゃないか。すぐPan Africa Newsに書いたらいいよ。書きたまえ。」

 中村 「…。」

 仮説はもろくもくずれ(ただし、まだ検討の余地はないことはないのですが)、Pan Africa Newsは記事を一つ失ったのでした。

 新しいメスは、発情して性皮は腫れていましたが、まだまだ体つきも小さく推定10歳から11歳くらいというところでしょうか。特徴的な顔だったので、最初の日のうちに顔を覚えてしまい、「ユリ」と名づけました。マハレ野生動物保護協会会員で最近2回もマハレに来られた丹羽百合子さんにちなんだ名前です。

 ユリはまだ若いせいもあってか、急速に人間の存在に慣れました。すでに2日目には30mくらい距離をおけば、地上でも追跡ができるくらいになりました。追いかけて見ると、プリムスやオリオンといった若いオスたちが張り切ってエスコートしようとしており、ユリの方もまんざらではなさそうです。

 その後10月中はほとんど姿を見せなくなり、他所のグループに行ってしまったのではないかと心配していたのでした。しかし、人間の側にも新入りの花村君が到着し、観察を始めた11月には比較的よく姿を現すようになりました。ユリは、チンパンジー、人間にかかわらず、若いオス好きなのでしょうか。このころには、こちらがじっとしていれば数mのところを通過するほどになりました。

 ユリは、子供のチンパンジーにも人気のようです。アカディアやリズなどコドモのメスたちがかわるがわる毛づくろいをしていました。ひょっとしたらいい遊び仲間だと思われているのかもしれません。



写真1: 新入りのユリ。イサカマの実を手に入れてうれしそうである。


(なかむら みちお、京都大学大学院理学研究科)




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